豆腐のうまみを味わせてくれる店であるほかに、フォンアンが巷をにぎわす理由がもう一つ。実はここ、1933年から2017年までの84年間・3世代にわたり続いたニューヨークで最も古い家族経営の豆腐屋「フォン・イン・トゥー」の生まれ変わりなのだ。それゆえ、古い常連の「あの味がまた食べられる」という期待と、新規客の「現代にまちの豆腐屋?」の好奇心があいまって、幅広い世代・人種からの注目は熱い。老舗豆腐屋の復活を実現させたのは、創業者の孫、ポール・エン(53)。伝統84年の味を再現しつつ、まちで豆腐を買うことを忘れた、あるいは知らない現代人を惹きつける店づくり、メニュー作りに勤しむ。 レシピ帳もなければ、材料もわからず。「計量カップは捨てられていました」 「野菜を買いに八百屋へ。肉を買いに精肉店へ。新鮮な豆腐を買いにフォン・イン・トゥーへ。そんな具合で、チャイナタウンのご近所さんは、日課のように祖父の