■森田芳夫『国史と朝鮮』(緑旗連盟、1939年) 緑旗連盟は、1933年に京城で結成された社会教化団体である。森田は、京城帝大の朝鮮史学科出身であった。本書の肩書きには、「緑旗日本文化研究所員」とある。 本書は「今日の朝鮮問題講座」シリーズの第6巻に当たる。全十八章で、第一章、日本の建国神話から始まり、古代から近代まで日本と朝鮮を対比する形で論じられ、第十七章が韓国併合となっている。 第十七章では、円満な韓国併合像をもって併合が叙述されている。そのポイントは、以下の三点である。 一進会による合邦の請願があったこと 明治天皇が韓国併合の詔書を渙発したこと 歴史的に朝鮮が脆弱性を有する一方、隣国に強力な日本が存在すること 1.に関しては、「一進会員百萬」、「大韓商務組合(七十三萬人の会員を有する行商人の団体)」、「漢城普信社(二千二百四十名の会員)」とされるように、読者に請願支持者の拡がりを印