さて、拙稿に「書かなかったこと」や「書いた後に考えたこと」、それも拙稿が記述の対象とした人びとと議論を交わすなかで「考えたこと」を紹介していくためにも、拙稿が何を書いたものかについて、最低限の了解をもっておきたいと思います。 『再検討 教育機会の平等』の編者である宮寺先生執筆の序論から拙稿の内容をコンパクトに紹介した部分を抜き出します。 第五章の森論文(個性化教育の可能性――愛知県東浦町の教育実践の系譜から)では、一九九〇年代以降展開されてきた「教育の個性化/自由化」政策に向けられた教育社会学の言説が、教育機会の階層間格差拡大という側面だけに焦点を当ててきた点で、一面的であると批判する。「個別化・個性化教育」の実践には、地域の公立学校で受け継がれてきた独自の理論が見出しうるとして、森はそれを「教育可能性に向けたテクノロジーの昂進」という視点から抉出するとともに、教育実践運動が、地域とのつな