三谷武司,2006,「von Neumann-Morgenstern効用関数は基数的か?」,盛山和夫(編),『高齢化社会の公共性に関する社会学的研究』,pp. 153-166 (PDFはこちら) 1. 基数的効用関数、序数的効用関数、NM効用関数 John C. Harsanyiは、von Neumann-Morgenstern効用関数(以下、NM効用関数と略記する。)を用いることで、全員の効用値の総和を最大化するような選択が倫理的に正しい選択だとする効用総和主義を復活させたとされている。少なくとも、本人および彼の支持者の多くはそう考えている。まずはこの「復活」ということの意味を確認しておく。 1.1. 基数的効用関数と効用総和主義 効用総和主義というのはもともと、ある状況で個人が体験する一種の心理状態を倫理的判断の基礎に据えようとする立場であった。たとえば快感、たとえば幸福がそれに当たる