前に出た大塚ひかりには『男は美人の嘘が好き :ひかりと影の平家物語』(一九九九)という著作がある。大塚は、『源氏物語』や『古事記』については鋭い議論を繰り出すが、この『平家』論はあまり鋭くない。女性論を中心としており、文庫化(二〇一二)された際には『女嫌いの平家物語』と改題された。『平家』にはあまり女の活躍がない。木曽義仲の愛妾とされる巴は、出てはくるがちらりとだけで、冒頭の祇王・祇女、仏御前のほかに、印象に残るのは小宰相くらいで、清盛の孫の通盛に恋われてその妻となり、湊川で通盛が戦死したと聞いて泣き伏し、一ノ谷で身投げして死んでしまう。 そもそも通盛の妻となる経緯が、通盛が口説いてもなびかないので、主人の上西門院が脅すようにして通盛のほうへ追いやったという経緯があり、あまり逸話として好きではない。 大塚の著は、今ひとつ私には理解の行き届かないところがあり、友人なんだから訊けばいいのだが、