昨年3月、放射能拡散予測の専門家が内閣府原子力安全委員会に呼び込まれたのは16日以降のことだ。まず、日本原子力研究開発機構の茅野政道さんが、数日後に名古屋大の山澤弘実さんが加わった。 2人は今やすっかり有名になった「SPEEDI」(緊急時迅速放射能影響予測システム)と実際の測定値を使い、原子炉から放出された放射性物質の量を推定した。当時の茅野さんの回想が興味深い。「さまざまな省庁や機関が行った測定値がウェブ上に散らばっていて、探すのに苦労した」 事故当初、放射能拡散予測の専門家がいなかったばかりか、全体の実測値さえ把握されていなかったことになる。いまさらながら驚くが、驚くような状況は今も続いている。 SPEEDIは本来なら住民避難に役立つはずなのか、もともと役に立たないものなのか。見方が真っ二つに分かれたまま、防災指針の改定が進められていることだ。 SPEEDIの失策については政府自身や第