私は野村美月の書く小説が嫌いである。 彼女が書く作品は、不思議なほど私の心を苛立たせる。 最初にそれを感じたのは『“文学少女”』シリーズである。 『“文学少女”』シリーズは、本が大好きすぎて食べてしまうと自称する遠子先輩が、身の周りで起こった事件に文学的な妄想で挑んでいくミステリ作品である。彼女は事件を解決するにあたって、当然のように文学作品を引用する。何故なら、彼女の周囲で発生する事件は、常に文学作品をなぞらえたものだからである。真相を自供する黒幕は、文学作品の登場人物に同一化した自分の心情を滔々と語る。もちろん、その現場には文学的知識に欠けた間抜け野郎は一人もいない。 それらを読んで私は思ったものだ。 何やこの世界、と。 文学作品を読んでいることは当たり前であるという前提に。 読書は数ある趣味の中でも至高のものであり、そうでない人間は野蛮だという雰囲気に。 本が好きだと嘯きながら、その