彼女は駐車場で枕を見つけた。車がタイヤを接して停めるための部分だ。車の下にからだを潜らせて首だけを出す。布団の中のようにあたたかくはないけれども、何もないよりはるかによかった。彼女はなにかにくるまったり狭いところに入りこむのがことのほか好きだった。いちばん好きな遊びはくるりと丸まって段ボール箱に入り、内側から蓋を閉じて目も閉じるというものだった。 そこは彼女の知らない場所だった。いちばん遠い友だちの家からさらにいくつか角を曲がり、とても長い距離を歩いた。七歳の彼女にとって、そこはお話の中のように遠い場所だった。来た道のことは覚えていなかった。彼女はなにしろぼんやりした子どもで、たいていのことは忘れてしまうのだった。 ここで眠ろうと彼女は思う。でもまだねむたくはなかった。夜更かししたっていいんだと彼女は思う。だって私は家出したんだから、好きなだけ眠っていいんだ。そう思うとなんだかくらくらした