小川 敦生 多摩美術大学美術学部芸術学科教授 日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。 この著者の記事を見る
公益社団法人日本通信販売協会の調査によると、2011年度の通販の売上高は5兆900億円となり、1982年の調査開始以来、初めて5兆円を突破したとのこと。成長著しいネット通販が牽引していることもあり、過去10年で市場規模は約2倍となった。一方、百貨店の売上高は、2002年の8兆2900億円から2011年度は6兆1500円とほぼ毎年減少を続けている。 つまりお店に客が来ないわけだ。そういう現状の中、化粧品大手の株式会社ポーラでは、新たな試みで売り上げを伸ばしているという。その試みのポイントはバス。しかし、乗客を運ぶバスをイメージしてはいけない。それはもはや“動く高級ブティック”と言った方が適している。その人気のほどを株式会社ポーラ多様化拡販部長・衛藤勝己氏に聞いた。 停滞する催事販売 「私たちはこの大型バスを『ムービングサロン』と名付けておりますが、昨年10月に稼働を開始し、おかげさまで現在は
「早読み 深読み 朝鮮半島」が150回を超えた。偶然にも連載開始と軌を一にして、日本人の「韓国嫌い」が激しくなった。坂巻正伸・日経ビジネス副編集長と深読みした。 なぜ、こんなに居丈高に? 坂巻:前々回の「『ヒトラーと心中した日本』になる韓国」で、連載150回を記録しました。初回は2012年1月12日掲載ですから、3年9カ月も続いていることになります。 鈴置:韓国外交を主要テーマに書いてきましたが、そんな特殊な話を飽きもせずに読んでくれる読者がいることは、驚きです。 坂巻:毎回、非常にたくさんの皆さんにお読みいただき、たくさんのコメントをいただき、感謝しています。 新たな読者も増えています。日韓関係にさほど関心を持っていなかった人や「隣の国だから仲良くした方がいい」と考えていた人が「なぜ韓国はこれほど居丈高になったのか」と首を傾げるようになりました。 この「早読み 深読み 朝鮮半島」は、そん
日経ビジネス8月3日号の特集「社畜卒業宣言」では、会社に忠誠を誓う代わりに雇用を守る暗黙の「契約」を反故にし始めた企業の実態と、それによって、居場所をなくし始めたバブル入社組の姿を描き、その先にあるべき未来の雇用のあり方を探った。 この特集の連動企画である本連載の3回目では、バブル入社組に続いて試練に直面することになる下の世代に焦点を当てる。就職氷河期に入社した富士ゼロックスの同世代の社員が、自分の担当領域という殻に閉じこもるバブル入社組を反面教師にしながら、会社の既存の仕組みから飛び出し、会社を巻き込んで新しい働き方を模索している動きを紹介する。 「正直に言うと、『おっさん、ちょっと邪魔なんですけど』って思っていました」。富士ゼロックスの若手社員有志である「秘密結社わるだ組」。中心メンバーである大川陽介氏(34歳)は率直にこう言う。 2012年のことだ。大川氏は仕事がつまらなくなっていた
「会社のキャリア支援を受けると決めてから、体調がすぐれません。私はもうすぐ退職するので、これからは休暇を消化していきます」 関東地方が梅雨入りしてほどなく、大手電機メーカーのある部署で働く社員たちは一斉にこんなメールを受け取った。差出人はバブル前夜に入社した、50代前半の部長だ。メールでの「宣言」通り、それまで普通に働いていた部長はその日からほとんど、オフィスに姿を見せなくなった。 どうやら数カ月前に、会社から転職支援プログラムを受けるように打診されていたようだ。「景気が良い今のうちに『次』を考えるほうが、あなたにとっても幸せだ」と、人事に諭されたらしい。会社の業績は悪くない。今決めると割増退職金の金額がかなり良いみたいだ、という噂はあっという間に部署中に広がった。 「転職自体は個人の選択だからいいけれど…」と、この部署で働く中堅社員は言葉を濁す。問題は、引き継ぎがほとんどないままに、部長
今回は、ある米国人女性がネット上で投げかけた相談を取り上げたい。26歳の匿名女性がネット上の人生相談で、「早期退職したい」と書いたことが波紋を広げ、何千人もが書き込みをする事態になっている。 相談内容と回答者の見解、さらにコメントを示しながら、イマの米国人男女が抱える思いを考察してみたい。 まず相談内容を簡単に紹介する。 「私はIT産業が盛んな都市に住んでいる26歳の女性です。大学を卒業して以来、社会福祉の仕事をしていて、現在はホスピス(終末期ケアを行う施設)で働いています。ただ仕事でさまざまな家族に接しているうちに寂寥感がつのり、ノイローゼの一歩手前です。転職も考えましたが、やりたい仕事が見つかりません。それなら、いま一緒に暮らしている恋人のために炊事や掃除をして生活したいと思っています。彼はそれでも構わないと思っているようです。26歳で退職というのは早過ぎますか」(要約) 日本では勝ち
皆さん、こんにちは。月に1度の読書コラムです。今回のテーマはドイツです。なぜ今回、ドイツを取り上げるのかというと、日本とドイツは似たところが多く、多くのことが学べるような気がするからです。 戦後、日本とドイツは両国とも、がれきの山から立ち上がりました。しかしよく考えてみると、どちらがより過酷な状況だったかと言われれば、筆者はドイツの方が大変だったと思います。 日本は米国に占領されただけですが、ドイツは旧ソ連、米国、フランス、連合王国の4カ国に占領されました。さらに、東ドイツと西ドイツ、2つに分断されました。 それを統一して東ドイツを吸収したのは20年ほど前ですが、巨額の統一コストを負担しなければなりませんでした。がれきの山から再出発したのは同じだったけれど、ドイツの方がはるかに状況が厳しかったのです。 それにもかかわらず、ドイツの経済は近年絶好調ですし、ユーロという重荷を抱えてはいますが、
北陸地方のある有名なコメ農家が最近、面白いことを教えてくれた。「関東の知人の農家が、建設業をやろうとしている」。米価の急落で経営がかたむくのを防ぐため、土木工事を請け負って収益源を増やすのがねらいという。新しい形で、専業の稲作経営から兼業への移行が始まろうとしている。 深刻な米価下落が促す「建設兼業」 今年の米価の下落は、各地のコメ農家に経営のあり方を再考することをせまるほど深刻だ。農協と卸会社の10月の取引価格は60キロで1万2215円と、2013年産より17%低く、12年産と比べると26%下落した。一部のスーパーは、5キロ1000円という破格の値段で新米を売り出した。 値段が安くなった分、消費者がたくさんコメを食べてくれればいい。だが、日本人のコメ離れはなお進行中で、いくら安くても消費の減少にブレーキがかかる気配はない。規模拡大を進め、先進的と言われている農家のあいだからも「このまま米
数日前、ツイッター上に流れてきた一連の資料が、タイムラインの話題をさらった。 内容は、このようなものだ。 この中で、論者は、日本の大学を「Gの世界」(グローバル経済圏)に対応した「G型(グローバル型大学)大学」と、「Lの世界」(ローカル経済圏)に対応した「L型(ローカル型)大学」という二つのコースに分離させるプランを提示しているわけなのだが、特にツイッター上の人々の注目を引いたのは、7ページ目に出てくる図表だ。 この図表は、「L型大学で学ぶべき内容(例)」として、以下のような実例を挙げている。 ※文学・英文学部→「シェイクスピア、文学概論」→ではなく→「観光業で必要となる英語、地元の歴史・文化の名所説明力 ※経済・経営学部→「マイケル・ポーター、戦略論」→ではなく→「簿記・会計、弥生会計ソフトの使い方」 ※法学部→「憲法、刑法」→ではなく→「道路交通法、大型第二種免許・大型特殊第二免許の取
社内にいるときスリッパに履き替えていませんか。 客先訪問など緊張する外回りから戻ってきて革靴を脱ぐとほっとするという人がいます。それはそれでよいのですが、いつまでもほっとしていてよいわけではありません。 スリッパを履いて会議に出る営業部長と社長との会話を読んでみてください。 ●社長:「なぜ君を呼んだか、わかるか」 ○営業部長:「ええと下期の見通しでしょうか」 ●社長:「違う。私が大嫌いなことの調査結果を見たからだ」 ○営業部長:「……」 ●社長:「総務課長に会議室の利用状況を調査させた。相変わらず長い会議をしている部署が多い。私の会議嫌いは知っているな。課長7人を集めて、2時間以内の会議を月に2回、2時間から3時間までの会議を12回、3時間以上の会議を6回も開いた部がある。どこだと思う」 ○営業部長:「うちでしょうか」 ●社長:「その通り。営業部の会議は目立って多かった」 ○営業部長:「そ
和田 智(わだ・さとし) カー&プロダクトデザイナー、SWdesign代表取締役 1961年東京生まれ。武蔵野美術大学卒。84年日産自動車入社。シニアデザイナーとして、初代セフィーロ(88年)、初代プレセア (89年)、セフィーロワゴン(96年)などの量販車のデザインを担当。89~91年、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート留学。日産勤務時代最後の作品として電気自動車ハイパーミニをデザイン。98年、アウディAG/アウディ・デザインへ移籍。シニアデザイナー兼クリエーティブマネジャーとして、A6、Q7、A5、A1、A7などの主力車種を担当。アウディのシンボルとも言えるシングルフレームグリルをデザインし、その後「世界でもっとも美しいクーペ」と評されるA5を担当、アウディブランド世界躍進に大きな貢献を果たす。2009年アウディから独立し、自身のデザインスタジオ「SWdesign 」を設立。独立後は
遙から 女性入閣5名。本当なら安倍総理は橋本聖子氏を入れて6名にしたかったはずだと勝手に想像している。小泉政権下では女性閣僚5名。それを超えたかったはずだ、と。外された要因はキス写真かと思いきや、「いや違う。身体を壊した」と。そして杖ついて激ヤセした橋本聖子氏の写真が出る。 じゃあ、なぜ身体を壊したのかのスイッチとしてキス写真があるのではないか。報道と体調はセットだと思っている。報道のされ方で入院や命を落とす人まで様々いるからだ。 じゃあ、あのキス写真は、身体を壊し、大臣の道を外されるほどのことだったのか、と、改めてあの"キス写真"とはなんだったのかを検証しないではいられなくなった。あの一枚の写真はセクハラの証拠としてひとりの女性をボコボコにせねばならないほどのスキャンダラスな一枚なのか。あるいは、ノリ、や、楽しい雰囲気の中のじゃれ方として済ませていい一瞬だったのか。そのお相手の高橋選手の
『絶対に受けたくない無駄な医療』では、米国の医学会が「Choosing Wisely」で挙げた100の無駄な医療を列挙している。 前回の連載で指摘しているように、無駄な医療の中には、医師により誘発されたものも存在している。世界的に権威のある医学誌の一つ、「Lancet(ランセット)」に2011年に掲載された論文からその一端を読み取ることができる。ここで指摘されたのは、「医師の自由放任主義」だ。それが機能してきた面はあったが、既に限界に達しているという指摘だった。 Choosing Wiselyの具体的な内容を改めて見ていきながら、構造問題に紐解いていこう。 はじめに、読者のみなさんにひとつ質問をしようと思う。見出しでも打ちだしているが、CT検査で受ける被曝量がどの程度か、という質問だ。
小林 三郎 氏(左) 中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授。1971年本田技術研究所に入社。1987年に日本初のエアバッグの開発・量産・市販に成功。2000年にはホンダの経営企画部長に就任。退職後、一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授を経て、2010年4月から現職。主な著書に『ホンダ イノベーションの神髄』、『ホンダ イノベーション魂!』など。 田子 學 氏(右) エムテド代表取締役 アートディレクター/デザイナー。東芝、「アマダナ」(リアル・フリート)での活動を経て独立起業。現在、慶應義塾大学大学院SDM研究科特任教授、法政大学デザイン工学部非常勤講師、東京造形大学非常勤講師も務める。主な著書に『デザインマネジメント ~アップル、グーグル、アウディ、ダイソンの経営の基本はこれだ』など。 (撮影:栗原 克己) 田子:前回の視野の広さに深く関連するかもしれないエピソードがあります。私は
私たちの暮らし向きは、ホントに良くなっているだろうか? 100万ドル(約1億円)以上の資産を保有する、日本の富裕世帯数は124万世帯となり、米国、中国に次いで世界3位となった(ボストン・コンサルティング・グループ調べ)。一方、「生活が苦しい」と6割の世帯が答え、母子世帯に限ると84.8%にもなる。 これは、先週、厚生労働省が発表した、国民生活基礎調査の概況で明らかになったこと。しかも、「子どもの貧困率」が16.3%と過去最悪を更新し、これは先進国でもトップレベルであることも明らかになった。 賃金アップ、ボーナスアップ、正社員化促進など、一見、景気のいい話題ばかりが報道されているけれど、ごく一部の人たちだけが潤っているということか? いつしかグローバル化が当たり前の世の中になってしまったけれど、グローバル化とは、デキる人“だけ”しか生き残れない社会に拍車をかけるモノ。一部の人と企業にしか利益
木村幹(きむら・かん) 神戸大学大学院・国際協力研究科教授、法学博士(京都大学)。1966年大阪府生まれ、京都大学大学院法学研究科博士前期課程修了。専攻は比較政治学、朝鮮半島地域研究。政治的指導者の人物像や時代状況から韓国という国と韓国人を読み解いて見せる。受賞作は『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(ミネルヴァ書房、第13回アジア・太平洋賞特別賞受賞)と『韓国における「権威主義的」体制の成立』(同、第25回サントリー学芸賞受賞)。一般向け書籍に『朝鮮半島をどう見るか』(集英社新書)、『韓国現代史』(中公新書)がある。ホームページはこちら。最近の注目論文は「日韓関係修復が難しい本当の理由」(Nippn.com 2013年12月20日)。(写真:鈴木愛子、以下同) 木村:韓国はルビコン河に飛び込みました。まだ「中国という向こう岸」にはたどり着いてはいない。しかし、こちらの岸――米国から
近頃、中国のネット通販が相次ぎ、米国で上場を果たしています。中国最大のネット通販の「タオバオ」を運営するアリババ社は、米国での上場準備を進めています。資金調達額がフェイスブックを超え、ネット企業としては過去最大になると言われています。上場が成功すれば、同社に3割以上出資している孫正義氏が率いるソフトバンクは約6兆円近い資産を手に入れるでしょう。 中国で第2位のネット通販JDドット・コム(京東商場)は5月22日、米ナスダック市場に上場しました。中国企業として米株式市場で過去最大の資金調達(17億8千万ドル、約1800億円)を実現したのです。 そうした中で、5月16日に「聚美優品」(JMEI)という中国の化粧品通販の会社もニューヨーク証券取引所(NYSE)で上場を果たしました。 アリババほど知名度が高くないためか、日本ではほとんど報道もされませんでした。創業して4年目ですが、すでに中国の化粧品
家を買うべきか、借り続けるべきかは若手社員にとって永遠の命題だ。仕事のことならともかく、こと持ち家問題に関しては、先輩に相談しても明快な答えは得られない。既に自宅を購入した“持ち家派”は「家賃を払い続けても賃貸住宅は未来永劫、他人の物。同じくらいの金額ならローンを払って自分の資産にした方がよい」と主張する。一方、“賃貸派”は「先が見えない中でローンを組むなんてとんでもない」と持ち家戦略のリスクを煽る。両者の主張は平行線を辿るばかりで、永遠に決着が付きそうにない。 だが、そんな中、「サラリーマンは自宅を買ってはいけない」と明確に主張するコンサルタント・不動産投資家がいる。その根拠と、賃貸派のアキレス腱である老後の暮らしについて対策を聞いた。 (聞き手は鈴木 信行) 著書「サラリーマンは自宅を買うな」で、会社員がローンを組んで自宅を所有するリスクを主張されています。今ここに、まさに自宅を買わん
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