40数年もかけて4000人から話を聞いたということ、戦友会の抑圧構造が一般兵士の戦場体験証言の少なさに結びついているという新聞広告を見て本書を手にとった。 兵士としての戦場体験を直接聞けたのは、ぼくの父方の祖父と、つれあいの父方の祖父の2人だけである。しかし、どちらからも詳しい戦場体験を聞くことはできなかった。一、二度、アウトラインのようなものを話してもらってそれで終わりだった。こちらも「お話につきあう」程度の心構えだったので、当然である。どちらも鬼籍に入ってしまい、もう後の祭り。取り返しがつかない。いかに貴重な機会を失ったかを今さらながら思い知る。 子どもとして空襲の被害に遭ったなどの「戦争体験」を語れる世代はまだ残っているが、保阪正康が本書で書いているとおり、2015年現在、戦場を体験した人は90代以上ということになり、 戦後七十年という節目の年、実際の戦場体験は今では語れる人がいなく