春になると、君を思い出す。別れからの出会いの時期。 改札口を、柱の影から観察。 おどおどした君の姿を見つけ、ニコッと笑って目があった瞬間に、風のように走り出した。戸惑う君に、冗談だよって囁きながらはにかんで言ってみる。 早朝の太陽が眩しく、優しく、私の頭をぽんぽんっと撫でた。 毎年、この時期がとても楽しみだった。 花見という理由をつけて、君に逢いたかった。 桜なんて口実で、仮面の下ではずっと会いたいと連呼してた。 遠く、遠くにいている君は、幻なのか、現実なのか。 知ってた。近いのに届かないこと。 好意の文字をそっと花びらに包み込んで飛ばしても、 君はサッと蝶のようにひらりひらり。 だけど、温かい。まるでひろーい温水プールに身を投げだして プカプカ泳ぐみたいに、君の言葉が心地よかった。 あれから、どれだけ時間がたっただろう。 桜が散って、初夏の風が優しく肌を撫でていくたびに、思い出す。 さよ