佐々木中『切りとれ、あの祈る手を――<本>と<革命>をめぐる五つの夜話』を読んで、いろいろ考えていたら、だんだん疑問や混乱が膨れ上がってきて、収拾がつかなくなってきた。私はこの本を「読んでしまった」がために、どうにも「読めないでいる」という苦境に陥ってしまったようなのである。 佐々木氏はこの本で、われわれの虚を突くような、驚くべき歴史的展望を提示している。本を読むこと、書くこと、それが革命だったのだと。 たとえばルターの革命(ふつうそれは宗教改革と呼ばれているが、大文字のReformation、つまり「大革命」と呼ぶ慣わしもあるという)とは、一言でいえば「聖書を読む運動」だった。《ルターは何をしたか。聖書を読んだ。彼は聖書を読み、聖書を翻訳し、そして数限りない本を書いた。かくして革命は起きた。本を読むこと、それが革命だったのです。》 「欧米の革命」に限って言えば、「ひとは少なくとも六つの革