Aさんは認知症の70代男性。奥さんと二人暮らし。体育教師だったが、退職後に認知症が進んで意思疎通がまったく図れなくなった。もともと柔道で国体にも行った人で、教え子にも恐れられるほど厳しい人だった。生徒指導では床に霜の降りた冷たい柔道場に、暖房も入れずに何時間も正座させて足を凍傷にさせたり、炎天下でグラウンドを何周もさせて、熱中症で救急搬送させるような人であった。それも教育のためと信じていた。 認知症が進んで、人を人とも思わない暴言を昼夜問わずに放つようになった。散歩に出せば大声で下品なことを叫び、ズボンをおろして歩くので、警察に再三注意された。しかたなく、自宅で世話をすることになった。 日に3度の食事から入浴、家中に垂れ流すシモの世話、外出して店で万引きした際のお詫びと弁償徘徊した時の捜索や町内会へのお詫び奥さんが献身的にお世話。過労がたたって老々介護のさなかに奥さんが亡くなった。悲劇が深
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