日直のボウシータです。「4月病文学入門2010」、第2回です。 前回書いたとおり、19世紀の小説(とくに市民社会が早くから高度に発達したフランスや英国)の小説では、不道徳で悲惨でスキャンダラスでショッキングなことを取り上げるようになる(ただしヴィクトリア期の英国にはいっぽうで性表現への強い規制の意識があり、露骨な性表現を含む小説は地下出版だったそうだ)。つまり、現在の小説の直接のご先祖さまが最初に現れたのが、19世紀ヨーロッパだったといえよう。 そんな小説は、良識ある人々から見れば「嘆かわしい」「けしからん」=「悪い」ものであり、他方、小説ファンからすればこれは「人間性の解放」「社会告発」=「いい」もの、ということになるわけだ。 一篇の小説をめぐって、いっぽうには「けしからん」「くだらん」「不快である」と言って怒ったり無視したりする人たちがいる。他方にはその人たちを「この小説にたいしてそん