昨今ますます存在感を増している物流に注目して関東地域の中世史を描き出すと、現在主流となっている陸運もさることながら、河川や内海による水運網が経済の動脈として大事な役割を担っていることがわかります。 本エッセイでは、中世東国水運の拠点の一つ、香取神宮で現在も行われている神幸祭(「御船遊」)に着目します。 二〇二六年四月一五・一六日(もとは旧暦三月)に、千葉県香取かとり市に鎮座する香取神宮の大祭(神幸祭じんこうさい、一二年毎の午うま年に挙行)が行われる。香取神宮の神幸祭は、中世には「御船遊」と呼ばれており、遅くとも中世以来の祭礼である。戦国時代以降、中断しており、明治八年(一八七五)に再興されたものである。祭礼を再興する際に、参照されたものは「香取神宮神幸祭絵巻」であった。同絵巻は複数伝来するが、旧社家の権ごん検非違使けびいし家本からは書誌的な情報を確認することができる。 その奥書には、鎌倉時

