ドナルド・トランプがアメリカ合衆国の大統領になった。なにか、なんというか、実に妙な気持ちになった。おれはP.K.ディックの世界の住人なのか、というような気になった。妙な出自の、妙な人間が独裁者となるディストピア。そんなイメージ。トランプという名前が、それに拍車をかける。 といっても、実際にトランプが大統領になったところで、どこまで世界は変わるのだろうか。おれにはよくわからない。実際のところ、べつになにもできなかったし、なにも変わりませんでした、おしまい、ということもあるかもしれない。少なくともメキシコとの間に壁は作られないだろう。 この前、『立候補』というドキュメンタリー映画を観た。踊るマック赤坂を見て、「彼が立候補者? わたしの国にはこんなクレイジーな人はいない」と言っていた黒人女性が出てきたが、もしも彼女の母国がアメリカだったら、いまごろどんな顔をしているだろう? 規模の大きな大きなマ