あんまり喜びすぎないようにしよう、っていつも思っていた。わたしは子供の頃から遅れていた。人並みに出来ることが、何一つなかった。普通にすることができなかった。だから、みんなが出来て当たり前のことを喜んだところで、虚しいだけだと、あるとき気づいてしまった。 それからはもう、自ら道化になるしかないと思っては、平気なフリして飄々と振舞っていたけど、本当はつらかった。 今年の春、好きなことをしてみよう、と思って文章を書いて発表した。100冊売り切った。自分の作ったものを、お金を出してまで欲しいと思ってくれる人がいることに、正直かなりびっくりしていた。色んな出会いが増えた。友達なんていらない、って意地張ってたのに、気づけばたくさんの縁に恵まれた。 それからずっと書き続けて、秋にもう一冊本を書いた。自分を晒してみようと思った。「いかれた慕情」と名付けた本に、恥ずかしいことをたくさん書いた。もう失うものな