日本ペンクラブは、最高裁判所が表現の自由をめぐって示した先ごろの判断について、強い抗議の意志を表明しておきたい。 最高裁は十一月三十日、政治的事項を表現したビラを一般市民が戸別に配布した行為を、住居侵入罪によって有罪と断じ、さらに十二月十五日、これに対して行われた訂正要求を棄却し、判決が確定した。 表現の自由は、民主主義の根幹をなす原理である。戦前・戦中の日本を引き合いに出すまでもなく、表現の自由が抑圧された社会がどのような悲惨な状況に陥るか、私たちは知っている。当時の言論弾圧について、司法もまた多大な責任を負っている。 戦後日本の民主主義はこの反省の上に立って、表現の自由を最大限保障してきたはずであった。表現の自由は新聞・テレビ・雑誌等、マスメディアの存立基盤として語られることの多い概念だが、しかし、何よりもそれが、社会を構成する個々人が享受すべき基本的人権であることを忘れてはならな