村木君は同じ大学の同じサークルで一学年後輩だった。と言っても彼は浪人していたから年は同じだ。仲良くなったのは私が先に卒業、就職してからのことだ。 村木君は厭世的で論理的で、軽い大学生ノリが嫌いで、人とは一線を置いていつも人を観察していた。女の子を好きになったことがないから実験的に好きになれそうな子を意識して好きだと言ってたら本当に好きになりすぎて辛くなった、などと報告して来たりしてちょっと変わった人だと思った。彼は漫画と油絵を描いていて私はそれが好きだったし、媚びない愛想笑いもしない気風が好ましく思えた。 当時「電子メール」や「eメール」と呼ぶのが普通だったメールで、頻繁に長文のやりとりをするようになった。村木君は議論が好きだった。私が全く興味がない政治や歴史に関心があるようだったけど、私は恋愛の話ばかりしていた。私が「振り向いてくれない人が好き」と言ったら「アイドルでも好きになれば」と返