別れのときには、 あまりいろいろなことを考えてはいけない。 最後にこの風景を刻みつけておこうとか、 ここではあんなことがあったとか、 もう二度とここへ来ることはないのではないかとか、 そういうことを考えはじめるとほんとうにキリがなくて、 足がとまってしまうからだ。 だから、ついにその地を離れるという間際では、 あまりいろいろなことを考えてはいけない。 あえて、慌ただしく立ち去るべきだ。 何気なく、さり気なく、自動改札を抜けるみたいに。 11月某日。引っ越し当日。 乗組員たちは、朝から自分の荷物の梱包をはじめる。 もう、まもなく、引っ越し業者さんがやってくる。 いろんなプロジェクトのいろんな資料を整理。 捨てるものあり、保存するものあり。 棚に残った機材の最終確認と、梱包作業。 ダンボール2つでまとまる人もいれば、 5つあっても足りない、という人もいる。 冷蔵庫のなかに、ハンパに残ったものを