先日、私が幹事を務めている私的な勉強会で、與那覇潤氏を招いて『中国化する日本』の合評を行った。1000年の歴史を“蛮勇”をふるって300ページで語った本であるだけに、専門家が細かく見ていけば色々とツッコミ所はある。だが、いちいち揚げ足取りをしても生産的ではないので、個別的な問題には立ち入らず、なるべく本書の全体を議論するよう心がけた合評会であった。 しかし(当日は自粛したものの)日本中世史を専攻する身として、どうしても違和感をぬぐえなかったのが、源平合戦の評価である。與那覇氏は本書の中で、市場競争中心の「グローバリズム」を推進する西国の平氏政権と農業重視の守旧派勢力たる坂東武者が争い、勝利した後者が「反グローバル化政権」たる鎌倉幕府を築いたと説いている(45・46頁)。この辺りの記述が、一時期「第三の開国」と呼ばれたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を意識したものであることは疑いない。す