『関心領域 Zone of Interest』 第二次世界大戦下のポーランド、アウシュビッツ。ユダヤ人収容所の長ルドルフ・ヘスは、プールと温室がある広々とした庭つきの邸宅で5人の子どもたちと幸せな暮らしを営んでいる。周囲の豊かな自然と自身が隅々までデザインした邸宅での生活を満喫する妻ヘドウィグは、夫の転勤が決まったにもかかわらず、子どもたちとこの地にとどまることを希望する。アウシュビッツでの日々はまさに「理想の生活」だったーーただ一点、「壁の向こう側」を気にしなければ。誰もが羨む美しく平和な生活のバックグラウンドには、常に銃声と叫び声がかすかに響き、遠くに見える高い煙突からは人間を灰にした煙が立ち上る。略奪された贅沢品を普通に使い、壁一枚隔てた場所で行われている殺戮を知りながら、徹底して無関心でいられる家族たちの姿は、オスカー受賞式で監督ジョナサン・グレイザーが言及したガザの虐殺に対する人