映画『翔んで埼玉』が大ヒットしている。内容は荒唐無稽。劇中では「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ」といった言葉で「ダさいたま」がとことん否定される。だが、意外にもそうした描写は歴史的事実と無関係ではないという。「埼玉の歴史のプロ」である埼玉県立文書館の佐藤美弥学芸員が解説する――。 ■手形を持たずに東京に入れば、たちまち捕らえられる世界 映画『翔んで埼玉』(武内英樹監督2019)が人気である。公式ウェブサイトによれば「埼玉県内オープニング興行収入・東映歴代実写映画史上圧倒的No.1! 」であるという。筆者は2019年3月13日に埼玉県さいたま市浦和区の劇場で鑑賞した。平日の夜の回にもかかわらず、268人のスクリーンが満席札止めとなっていて、その人気を実感した。 『翔んで埼玉』は魔夜峰央のコミック(『花とゆめ』白泉社、1982‐1983、宝島社2015)が原作で、「都会指数」の高い