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ブックマーク / booklog.jp (6)

  • モンタニャールおじさんさんの感想・レビュー

    カール・シュミット『憲法理論』に登場するinstitutionelle Garantieという概念が現代の日の法学に至るまで、いかに理解されてきたか、そしてその理解のどこに問題があるのかを示す研究。シュミットのテクストの正確な解釈を第一義的目的とするものではないとしつつも、シュミットが属するドイツ法学の伝統――サヴィニー以来の概念法学――を丹念に掘り起こし、その中で形成されたRechtsinstitut概念に着目することによって、シュミットがいかなる概念連関のもとで思考していたのかが示されている。論点は多岐にわたるが、結論だけ取り出すならば、シュミットがinstitutionelle Garantieの「真正の例」として職業官僚制の保護を挙げているのは、市民的法治国・普遍妥当的な自由の体系を選択したワイマール憲法に、特権の体系を構成しうる条文があったことの結果である。すなわち、自由の体系

    モンタニャールおじさんさんの感想・レビュー
    nizimeta
    nizimeta 2016/01/09
    “自由の体系と矛盾する特権的団体の存立を憲法律上、制度として保障するというのがシュミットの制度的保障論である”
  • モンタニャールおじさんさんの感想・レビュー

    フランス革命期のメアリ・ウルストンクラフトから19世紀中葉のフローラ・トリスタンまでを扱う、近代フェミニズム思想の歴史を分析する研究。まず、ウルストンクラフトの批判対象であるルソーとバークの女性論・家族論を再構成したあと、ウルストンクラフトによる「女性の権利の擁護」が詳しく取り上げられ、その夫ゴドウィンの女性論の弱点が指摘される。その後、近代資主義社会の成立と密接に関連しながら形成されていった19世紀のフェミニズム思想が、19世紀イギリスとフランスを題材にして具体的に検討される。その中でも、社会主義思想が必ずしも女性解放思想と繋がらない(例えばプルードン)ことの指摘など、「人間の解放」をうたう革命思想や社会主義・共産主義思想と女性解放思想の複雑な関係、またハナ・モアのケースに見られるように、価値観のレベルでは保守的でも、実践面では女性の社会進出を推し進めたケースなど、近代思想の複雑さを克

    モンタニャールおじさんさんの感想・レビュー
  • モンタニャールおじさんさんの感想・レビュー

    『フランス社会運動史』の序論にあたる部分の邦訳。倫理の現実態としての国家の原理は自由であり、所有の量・種類の差異によって階級分化が発生する社会の原理は不自由であるとする概念規定から出発し、この社会と国家の矛盾から人間共同体の運動が生じるというのがシュタインの基認識である。そこからシュタインは、自由を実現するためには社会だけでは不自由を解決できず、憲政(Verfassung)と行政(Verwaltung)による社会問題の解決が必要であるという一般「法則」を提示する。このような法則を実証するのが、大革命以降のフランス社会であり、その研究の重要性、ならびにその研究を「学問」にまで高めることにドイツ人の使命があると説かれる。シュタインの基的な考えを知るために最良の一冊であろう。 #ローレンツ・フォン・シュタイン

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  • モンタニャールおじさんさんの感想・レビュー

    帯にあるように、代表制は直接民主政の次善策という「神話」を再検討することを目的とする。全体の流れとしては、まず第一章「首相公選と世論」で、中曽根内閣以降日でも話題に登ることの多い首相公選制が、直接民主主義を実現する制度として語られてきた事実を取り上げ、しかしこの制度もまた議会制とは別の仕方で代表者を選出する制度に他ならないことを明らかにする。次に第二章「”デリバレーション”の意味するもの」では、もう少し学術的な方面で話題になることが多い「熟議」に話が進む。ここでも、熟議の制度化は「ポスト代表制」と簡単に言えるものではなく、むしろ代表制を補完する制度として位置づけられてきた事情を明らかにしつつ、他方で、「熟議」概念を突き詰めれば議会を不要とする制度構想にならざるを得ないのではないかとも指摘している。第3章と第4章はより理論的・思想史的な論述である。まず第3章では、ピトキンの代表概念研究に

    モンタニャールおじさんさんの感想・レビュー
    nizimeta
    nizimeta 2015/03/29
    “熟議の制度化は「ポスト代表制」と簡単に言えるものではなくむしろ代表制を補完する制度として位置づけられてきた事情を明らかにしつつ他方で熟議概念を突き詰めれば議会を不要とする制度構想にならざるを得ない”
  • モンタニャールおじさんさんの感想・レビュー

    旧約聖書から現代アメリカにおける福音派の思想までを扱う、キリスト教政治思想についての包括的入門書。書全体を貫く視座は、旧約において、唯一神が万人に理解可能な啓示を通じて人間集団を形成することを命じた、という「共同性」の視点と、世界の終末において神が悪を裁き正義を実現するという「終末意識」の視点である。この二つが旧約・新約で提示されたメッセージだとしたうえで、政治という営みを一定程度相対化する思想を包含したキリスト教が政治をどのように理解していくことになったのかが書第2部以降で描き出される。第2部では古代地中海世界における教会のあり方がテーマとなるが、独立した章を当てられているのはエウセビオスとアウグスティヌスである。アウグスティヌスはとりわけ、国家を「盗賊団」だとするほどに政治の営みの意義を相対化する視座の持ち主として論じられる。一方でエウセビオスは、終末意識という点では評価は低くなら

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  • モンタニャールおじさんさんの感想・レビュー

    事象の一般化・法則化が社会科学の任務であるという自然科学をモデルとした社会科学観に対して、社会科学の任務は有意味な行動の記述であり、そのために必要なのは哲学と同様の概念分析であるというテーゼをうちだす著作。言葉や行動の意味は社会を前提としている以上、意味の分析は――哲学として行われるにせよ社会科学として行われるにせよ――社会研究である、と著者のテーゼを言い換えることができるだろうが、このテーゼは、知識社会学にせよ思想研究にせよ、何らかの言葉や概念の研究を特に志向する者にとって非常な重要性を持つと思われる。 #ピーター・ウィンチ

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    nizimeta
    nizimeta 2015/01/28
    “事象の一般化・法則化が社会科学の任務であるという自然科学をモデルとした社会科学観に対して社会科学の任務は有意味な行動の記述でありそのために必要なのは哲学と同様の概念分析であるというテーゼをうちだす”
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