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ブックマーク / booklog.kinokuniya.co.jp (6)

  • 『マルクス 資本論の思考』熊野純彦(せりか書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「時間のエコノミー、時間のテクノロジー」 今どき七百頁余のマルクス論を書き下ろす。しかもカントやハイデガーの主著の翻訳を完成させる片手間に、である、いや、ひょっとすると『純粋理性批判』や『存在と時間』の訳業のほうが片手間かもしれず、『資論』解釈こそ命かもしれない。著者はそんな自分の仕事ぶりを、「おそらくほとんど正気の沙汰ではない」と評している(「あとがき」)。そんな「錯乱」(同上)する哲学者の出現を、われわれは長らく待ち望んできた。 いよいよ熊野哲学の全貌が姿を現わす。書を手にとった瞬間、そういう期待というか、畏れが心をよぎった。ヘーゲルにメルロ=ポンティ、レーヴィットにレヴィナス、いや古代から近代、現代までの西洋哲学史の総体をも、ひいては和辻哲郎、埴谷雄高までも、自分の中に深く摂り入れた、オリジナルな思考がここに展開される。――そんな光景がこの国で繰り

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  • 『9・30 世界を震撼させた日-インドネシア政変の真相と波紋』倉沢愛子(岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「9・30」と聞いて、すぐにわかる人はそれほど多くないだろう。それが、「世界を震撼させた日」であると言われても、怪訝に思うだけである。書の核心は、そこにある。これほど重要な日であるにもかかわらず、事件が起こったインドネシアでも多くが語られず、それが日を含む世界に大きな影響を与えたことがほとんど知られていないのはなぜか。書は、そのなぞに挑もうとしている。 9月30日に、なにが起こったのか。書表紙見返しに、簡潔にまとめられている。「一九六五年一〇月一日未明に、ジャカルタで軍事政変が勃発、半年後の一枚のスカルノ大統領が発したとされる命令書により、権限はスハルトへと移った。中国では文化大革命が起き、東南アジアにアセアンが成立し西側反共主義陣営の結束を固め、日は大規模な経済進出の足掛かりをつかんだ。政変を主謀したとされたインドネシア共産党は非合法化され、党員は

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  • 『ケネーからスラッファへ―忘れえぬ経済学者たち』菱山泉(名古屋大学出版会) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「経済学における客観主義―スラッファ没後30年」 今年は、イタリア出身の経済学者ピエロ・スラッファ(1898-1983)没後30年の年でもある。彼は若き日にイギリスの経済学界を揺るがした論文「競争的条件の下での収穫の法則」(1926年)で世界的に有名になったが、イギリスのケンブリッジ大学で研究生活を送るようになってからは、ライフワーク『商品による商品の生産』(1960年)の完成まで長い年月をかけて思索を続けた稀有のひとである。書(菱山泉著『ケネーからスラッファへ』名古屋大学出版会、1990年)は、わが国におけるスラッファ研究の権威者であった菱山泉(1923-2007)がスラッファを中心とする経済学史上の第一級の理論家を取り上げながら、経済学における客観主義の意義を平易に語った名著である。 「客観主義」というからには「主観主義」があるはずだが、書では、有名な

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  • 『資本理論とケインズ経済学』J・ロビンソン(日本経済評論社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「ジョーン・ロビンソン没後30年」 今年は、イギリスの女性経済学者ジョーン・ロビンソン(1903-83)没後30年の年に当たっている。ケインズの愛弟子のひとりで、生前は「ノーベル経済学賞」(注1)の受賞候補に何度も挙げられながらも、結局、その栄誉に浴することはなかった。彼女はみずから「左派ケインジアン」と名乗ったいたが、「左翼」であること自体は、いまの時代にはとくに魅力にはならないだろう。だが、彼女の学問の評価は「左翼」であったこととは別に考えなければならない。もちろん、彼女の支持者には政治的にも左派であったひとが多いのは事実だが、私の恩師(故菱山泉・京都大学名誉教授)はそうではなかった。むしろ「通説」を何の疑問も抱かずにただ教え続けるだけの学問的態度に飽き足らず、すべてを根的に考え直す姿勢に共感していたのだと思う。これは、ジョーン・ロビンソンの「盟友」であ

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  • 『新自由主義の帰結』服部茂幸(岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「”新自由主義" への戦闘宣言」 著者(服部茂幸氏)はポスト・ケインズ派経済学の研究や最近の量的緩和政策批判などで極めて精力的な活動を続けている経済学者だが、書(『新自由主義の帰結―なぜ世界経済は停滞するのか』岩波新書、2013年)は、一連の仕事を一般の読者にも近づきやすい形にまとめた話題作である。 書は、全体を通じて、新自由主義の経済学に基づく政策が危機を拡大させたことを厳しく批判しようとしているが、著者によれば、新自由主義とは、ケインズ主義や福祉国家による民間の経済活動への余計な介入を廃し、市場メカニズムによる効率的な資源配分を信頼する思想であり、その主な政策は、金融の規制緩和、供給サイドの重視、富の再分配よりも「トリクル・ダウン」(富裕者の優遇によって経済を活性化されれば、富が貧困層にも「滴り落ちる」という説)などに代表されるという。これだけでは、新

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  • 『デフレーション』吉川洋(日本経済新聞出版社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「デフレをどう捉えるか」 経済学はアダム・スミスの昔から優れて実践的な学問であったが、バブル崩壊後の日経済が長いあいだ低迷し続けるうちに「デフレからの脱却」という課題が急浮上するようになった。だが、経済学者やエコノミストの見解が容易に一致しないように、デフレをどう捉えるかについてもいろいろな考え方がある。書(『デフレーション』日経済新聞出版社、2013年)の著者である吉川洋氏(東京大学大学院経済学研究科教授)は、わが国を代表するケインジアンとして知られているが、一読すれば、自説とは対立する理論や政策(現内閣の「アベノミクス」もそのひとつだが)との違いが明確となるような丁寧な叙述がなされているのに気づくだろう。啓蒙書の模範というべき好著である。 一昔前、インフレ抑制が重要な経済問題であった頃、アメリカの高名な経済学者ミルトン・フリードマンは、「インフレは貨幣的な現

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