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ブックマーク / www.aozora.gr.jp (9)

  • ルイス・キャロル Lewis Carroll 石波杏訳 亀がアキレスに言ったこと What the Tortoise said to Achilles

    亀がアキレスに言ったこと What the Tortoise said to Achilles ルイス・キャロル Lewis Carroll 石波杏訳 アキレスは、亀に追いついて、甲羅の上に座ってくつろいでいました。 「じゃあ貴方は競走コースのゴールに到着したというんですか?」亀は言いました。「コースは無限に連なる距離からなるというのに。ゴールなんてできないって、誰だったか頭のいい人が証明したんじゃありませんでしたっけ。」 「できるんだよ」アキレスは言いました。「やってやった! 案ずるより歩くが易し。分かるだろ、距離はだんだん減っていくんだ。だから……」 「でも、だんだん増えていくとしたら?」亀は遮って言いました。「そしたらどうですか?」 「そしたら俺はここにいないだろうね」アキレスは謙遜して答えました。「それで君は今ごろ世界を何周もしてるだろう!」 「褒めすぎ……、いえ、重すぎです」亀が

  • 海野十三敗戦日記

    空襲都日記(一) はしがき 二週間ほど前より、帝都もかねて覚悟していたとおり「空襲される都」とはなった。 米機B29の編隊は、三日にあげず何十機も頭上にきて、爆弾と焼夷弾の雨をふらせ、あるいは悠々と偵察して去る。 味方の戦闘機の攻撃もはげしくなり、地上部隊の高射撃もだいぶんうまくなった。被害は今までのところ軽微である。 これからさらに空襲は激化して行くであろう。そこで特に、この「空襲都日記」をこしらえ、後日の用のため、記録をとっておくことにした。 昭和十九年十二月七日 これまでのことを簡単に ◯昭和十九年十一月一日に、米機の初空襲があった。少数機だった。偵察のためと思われた。(※マリアナ基地からのB29、東京を初偵察) 一万メートルあたりを飛来、味方戦闘機が出動したが間に合わず、高射砲もさっぱり当たらなかった。敵機は悠々と退散した。白い飛行雲をうしろに引きながら。 ◯こんなことになったのも

    nizimeta
    nizimeta 2017/08/16
  • デカルト Renati Des-Cartes 三木清訳 省察 MEDITATIONES 神の存在、及び人間の靈魂と肉體との區別を論證する、第一哲學についての DE PRIMA PHILOSOPHIA, IN QUIBUS DEI EXISTENTIA, ET ANIMAE HUMANAE A CORPORE DISTINCTIO, DEMONSTRANTUR.

    nizimeta
    nizimeta 2016/04/01
  • 坂口安吾 堕落論

    半年のうちに世相は変った。醜(しこ)の御楯(みたて)といでたつ我は。大君のへにこそ死なめかへりみはせじ。若者達は花と散ったが、同じ彼等が生き残って闇屋(やみや)となる。ももとせの命ねがはじいつの日か御楯とゆかん君とちぎりて。けなげな心情で男を送った女達も半年の月日のうちに夫君の位牌(いはい)にぬかずくことも事務的になるばかりであろうし、やがて新たな面影を胸に宿すのも遠い日のことではない。人間が変ったのではない。人間は元来そういうものであり、変ったのは世相の上皮だけのことだ。 昔、四十七士の助命を排して処刑を断行した理由の一つは、彼等が生きながらえて生き恥をさらし折角(せっかく)の名を汚す者が現れてはいけないという老婆心であったそうな。現代の法律にこんな人情は存在しない。けれども人の心情には多分にこの傾向が残っており、美しいものを美しいままで終らせたいということは一般的な心情の一つのようだ。

  • 坂口安吾 特攻隊に捧ぐ

    数百万の血をささげたこの戦争に、我々の心を真に高めてくれるような当の美談が少いということは、なんとしても切ないことだ。それは一に軍部の指導方針が、その根に於(おい)て、たとえば「お母さん」と叫んで死ぬ兵隊に、是が非でも「天皇陛下万歳」と叫ばせようというような非人間的なものであるから、真に人間の魂に訴える美しい話が乏しいのは仕方がないことであろう。 けれども敗戦のあげくが、軍の積悪があばかれるのは当然として、戦争にからまる何事をも悪い方へ悪い方へと解釈するのは決して健全なことではない。 たとえば戦争中は勇躍護国の花と散った特攻隊員が、敗戦後は専(もっぱ)ら「死にたくない」特攻隊員で、近頃では殉国の特攻隊員など一向にはやらなくなってしまったが、こう一方的にかたよるのは、いつの世にも排すべきで、自己自らを愚弄(ぐろう)することにほかならない。もとより死にたくないのは人の能で、自殺ですら多く

  • 寺田寅彦 学位について

    「学位売買事件」というあまり目出度(めでた)からぬ名前の事件が新聞社会欄の賑(にぎ)やかで無味な空虚の中に振り播(ま)かれた胡椒(こしょう)のごとく世間の耳目を刺戟した。正確な事実は審判の日を待たなければ判明しない。 学位などというものがあるからこんな騒ぎがもち上がる。だからそんなものを一切なくした方がよいという人がある。これは涜職者(とくしょくしゃ)を出すから小学校長を全廃せよ、腐った牛肉で中毒する人があるから牛肉をうなというような議論ではないかと思われる。 こんな事件が起るよりずっと以前から「博士濫造」という言葉が流行していた。誰が云い出した言葉か知れないが、こういう言葉は誰かが言い出すときっと流行するという性質をはじめから具有した言葉である。それは、既に博士である人達にとっても、また自分で博士になることに関心をもたない一般世人にとっても耳に入りやすい口触わりの好い言葉だからである。

  • 魯迅 井上紅梅訳 故郷

    わたしは厳寒を冒して、二千余里を隔て二十余年も別れていた故郷に帰って来た。時はもう冬の最中(さなか)で故郷に近づくに従って天気は小闇(おぐら)くなり、身を切るような風が船室に吹き込んでびゅうびゅうと鳴る。苫の隙間から外を見ると、蒼黄いろい空の下にしめやかな荒村(あれむら)があちこちに横たわっていささかの活気もない。わたしはうら悲しき心の動きが抑え切れなくなった。 おお! これこそ二十年来ときどき想い出す我が故郷ではないか。 わたしの想い出す故郷はまるきり、こんなものではない。わたしの故郷はもっと佳(よ)いところが多いのだ。しかしその佳いところを記すには姿もなく言葉もないので、どうやらまずこんなものだとしておこう。そうしてわたし自身解釈して、故郷はもともとこんなものだと言っておく。――進歩はしないがわたしの感ずるほどうら悲しいものでもなかろう。これはただわたし自身の心境の変化だ。今度の帰省は

  • 桃太郎 (芥川 竜之介)

    東大在学中に同人雑誌「新思潮」に発表した「鼻」を漱石が激賞し、文壇で活躍するようになる。王朝もの、近世初期のキリシタン文学、江戸時代の人物・事件、明治の文明開化期など、さまざまな時代の歴史的文献に題材をとり、スタイルや文体を使い分けたたくさんの短編小説を書いた。体力の衰えと「ぼんやりした不安」から自殺。その死は大正時代文学の終焉と重なっている。 「芥川龍之介」

    桃太郎 (芥川 竜之介)
  • フランツ・カフカ 中島敦訳 罪・苦痛・希望・及び眞實の道についての考察

    眞實の道は一の繩――別に高く張られてゐるわけではなく、地上からほんの少しの高さに張られてゐる一の繩を越えて行くのだ。それは人々がその上を歩いて行くためよりも、人々がそれに躓くためにつくられてゐるやうに思はれる。

    nizimeta
    nizimeta 2012/10/17
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