「日本の雇用終了」は、労働問題についての純然とした専門書。いや、書籍というより報告書に近いだろう。独立行政法人「労働政策研究・研修機構」(JIL)の第2期研究シリーズの一冊だ。 よほどの大型書店に行かなければ、見かけることもないはず。研究者や専門家に向けて刊行された本のため、およそ「おもしろさ」からはほど遠い内容だ。読みやすさの味付けなど、皆目無い。 ところが、いやだからこそ、これが「おもしろい」。副題に「労働局あっせん事例から」とある通り、全国の労働局が取り組んだ個別紛争に関する助言や指導の事例集である。 そう、つまり本書は、 「おまえはクビだ!」 と、本当に言い渡されたシーンの総集編なのだ。小説やテレビドラマではない、ざらざらしたホンモノの生々しさがある。 いったい、解雇を言い渡される瞬間とは、どんな場面なのか。いくつかを見ていこう。 ◇ 【ケース1】保育所で働いていた保母 医療福祉施