ブックマーク / miyuki-customer.hatenablog.com (34)

  • 【騎士団長殺し(第2部「遷ろうメタファー編」)】 - 村上春樹レヴューのブログ

    Amazonより 『騎士団長殺し』の後半は、〈メタファー〉を中心に展開される村上春樹の独特な世界観が描かれます。 認知言語学において、〈メタファー〉は単なる修飾技巧ではなく、私たちの基的な認知能力の一つと捉えられています。〈メタファー〉は言語活動のみならず、思考や行動にいたるまで、日常の営みのあらゆるところに浸透しています。 例えば、雨田具彦が暗殺を計画したナチの高官や、南京城内で中国人捕虜の首を切らせた少尉に向けた感情は、最期まで彼の口から語られることなく、『騎士団長殺し』の寓意に託されています。これは、言葉では直接表現できない私的な思考や感情を、〈メタファー〉を通して乗り越えようとする手法の一例です。 『遷ろうメタファー』 免色渉は秋川まりえを実の娘と考え、秋川家が見える場所に3年前に引っ越しました。彼は絵画教室の生徒であるまりえの肖像画を描くよう「私」に依頼し、偶然を装って彼女との

    【騎士団長殺し(第2部「遷ろうメタファー編」)】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2024/07/20
    この作品は、ここまで掘り下げることはできませんでした。正直、延長戦を拝読したいです。
  • 【騎士団長殺し(第1部「顕れるイデア編」)】 - 村上春樹レヴューのブログ

    Amazonより 村上春樹の長編小説『騎士団長殺し』を、2回に分けてご紹介します。 書は『ドン・ジョヴァンニ』をオマージュした作品です。主人公の「私」は派手な立ち回りはないものの、ドン・ファンさながらの性に奔放な自由人として描かれます。高名な日画家の雨田具彦や、謎の資産家である免色渉と表裏一体に関わる中で、やむなく『騎士団長のイデア』を殺めてしまいます。その後の「私」を待ち構えていたのは、地獄さながらの「異界巡り」でした。 それでは、ミステリー・SF歴史・哲学・文学の要素に、親子や夫婦の愛を加えて深みを増した村上作品をご一緒に。 『騎士団長のイデア』 に去られた「私」は、雨田智彦のアトリエを借りて孤独な一人暮らしを始めます。ある時、みみずくの鳴き声がする屋根裏で『騎士団長殺し』というタイトルの日画を発見し、鈴の音に導かれて裏の祠の下に隠された石室を見つけ出します。日画と石室の解

    【騎士団長殺し(第1部「顕れるイデア編」)】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2024/07/13
    この作品は、自分なりの解釈ができませんでしたか、こちらを読んで、なるほどと思いました。後編が楽しみです
  • 【女のいない男たち】(『女のいない男たち』より) - 村上春樹レヴューのブログ

    Amazonより この作品集は《女のいない男たち》というテーマを中心に、それぞれの短編がそのテーマを取り巻く形で収録されています。表題作でもある作はこのコンセプトを総括する内容になっていますので、関連するシーンを振り返りながらご紹介したいと思います。 物語は夜中の一時過ぎにかかってくる電話から始まります。電話の相手は低い声で「が先週の水曜日に自殺をしました」と告げると、それ以上何も言わずに電話を切ってしまいます。 『エムの死』 なぜ彼が僕のことを知っていたのか、それはわからない。彼女が僕の名前を「昔の恋人」として夫に教えたのだろうか?何のために?またどうやって彼はうちの電話番号を知ったのだろう。 彼女(仮にエムと呼ぶ)の夫が言ったことを「僕」は受け入れました。そして、エムの死の理解するため、過去の記憶を辿り自分自身を見つめ直していきます。 『結局のところ僕らがやらなくちゃならないのは、

    【女のいない男たち】(『女のいない男たち』より) - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2024/06/15
    コンセプトアルバムですね。村上春樹さん作品としては全体的に抑えた印象を受け、私は作品全体で、ショパンのノクターンを連想しました。
  • 【木野】(『女のいない男たち』より) - 村上春樹レヴューのブログ

    Amazonより 不倫がきっかけで心の迷宮に迷い込んでしまった男の話です。あてのない旅の末に《女のいない男たち》の一人が誕生する過程が描かれます。 『奇妙な訪問者たち』 ある日、木野が出張先からマンションに戻ると、会社の同僚とが裸でベッドに入っているのを目にした。彼は顔を伏せ、旅行バックを肩にかけたまま家を出て、翌日には会社に退職届を出した。その後、彼は叔母から店を譲り受け、『木野』という名のバーを開く。 別れたや、彼女と寝ていたかつての同僚に対する怒りや恨みの気持ちはなぜか湧いてこなかった。もちろん最初のうちは強い衝撃を受けたし、うまくものが考えられないような状態がしばらく続いたが、やがて「これもまあ仕方ないことだろう」と思うようになった。 今の彼には、怒りや恨みを知覚できないだけでなく、悲しみも恐怖も失望も見失い、幸福がどういうものなのかさえ見定めることができない。そんな木野が

    【木野】(『女のいない男たち』より) - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2024/05/18
    心の喪失と再生をテーマの1つと考える村上作品を、これだけ深く掘り下げる「心」を持っているのはスゴイ、と私は思っています。
  • 【イエスタデイ】(『女のいない男たち』より) - 村上春樹レヴューのブログ

    Amazonより 『イエスタデイ』の替え歌が話題になった作品です。示唆的要望を受けて雑誌掲載時から大幅に削られてしまい残念ですが、削られる前の出だしを少しだけご紹介。 昨日は あしたのおとといで おとといのあしたや それはまあ しゃあないよなあ 『達者な関西弁』 木樽は風呂に入るとよくビートルズの「イエスタデイ」に関西弁の歌詞をつけて歌った。田園調布で生まれ育った彼だが、子供の頃から阪神タイガースのファンで、好きが高じて達者な関西弁のしゃべりを身につけていた。 その当時の「僕」は大学生で、木樽とは早稲田の正門近くの喫茶店でアルバイトをする仲間だった。浪人生の木樽には小学校の頃からつきあっている栗田えりかというガールフレンドがいて、彼女は先に現役で上智大学に入学していた。ある土曜日、「僕」は木樽にのせられて、栗田えりかと二人で映画を観て事をすることになった。 『氷の月』 「私は同じ夢をよく

    【イエスタデイ】(『女のいない男たち』より) - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2024/02/23
    関西弁もインパクトですが、初期の作品に寄せているようで、ヒロインの造型が印象に残りました。女性も時代を経て変わったのでしょうかね。
  • 【フラニー】(『フラニーとズーイ』より) - 村上春樹レヴューのブログ

    Amazonより 『フラニーとズーイ』は、J.D.サリンジャーのライフワークであるグラス家の七人兄弟姉妹の物語のひとつです。末娘のフラニーと五男のズーイに焦点をあて、若者たちが自己を探求し、社会とのかかわりについて向き合う姿が描かれていています。 最初のパート『フラニー』は、恋人のレーンが駅のプラットフォームでフラニーの到着を待っている場面から始まります。二人は大学のフットボールの試合を観戦して週末を一緒に過ごす予定でした。しかしフラニーは、このところ何か固執した考えに取り付かれていて、出会った時から二人の間には感情的なすれ違いが生じています。 『ちっぽけなこきおろし屋』 例えば、レーンは学部でA評価がついた論文をフラニーに読んでもらいたがるのですが、彼女は彼が「セクション・マン」のように語っていると言ってダメ出しをします。「セクション・マン」とはゼミの教授の臨時代行で、彼女に言わせれば「

    【フラニー】(『フラニーとズーイ』より) - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2024/01/06
    今年もよろしくお願いします。翻訳物の考察は、他の追従を許さない鋭さを感じます。但し私は理解しきれない面もありますが💦
  • 【プレイバック】 - 村上春樹レヴューのブログ

    Amazonより 書はレイモンド・チャンドラーが描く《私立探偵マーロウ・シリーズ》の七作目にして遺作となった作品です。かつて角川映画『野生の証明』のキャッチ・コピー『タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない』が話題になりましたが、その元ネタとなったのが書に登場する私立探偵マーロウの決め台詞です。 《あらすじ》 私立探偵フィリップ・マーロウは、弁護士のクライド・アムニーなる人物から仕事を依頼された。ユニオン駅で特急列車から降りてくる女を尾行せよ、と。その女はエレナー・キング、またの名をベティー・メイフィールド。身長160センチ、年齢29歳、黒みを帯びた赤毛。マーロウは彼女が恐喝されていることを知る。恐喝者男との危険なファイト、エレナ―とのロマンス、恐喝男の変死とその死体の消滅。それは筋書きのない追跡劇のように思われたが・・・ 『君はただのおとりに過ぎなかった』 「

    【プレイバック】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/11/18
    今回の投稿は、いつになく熱を込めていますね。但し私は、どうも昔から「顎が弱い」ので、咀嚼する力はまだ足りないようです。定年後に再チャレンジしたいですね。
  • 【1Q84 BOOK3】 - 村上春樹レヴューのブログ

    BOOK3では牛河の章が加わり、3つの視点が交差する形で物語が進行します。牛河の追跡を交わして再会をした天吾と青豆は1Q84からの脱出を試みます。胸のすくようなエンターテイメントの先に浮かび上がる重厚なテーマ。どうぞ最後までお付き合い下さい。 《牛河の物語》 俺には、ほかの人間があまり持ちあわせていないいくつかの資質がある。天性の嗅覚と、いったん何かにしがみついたら放さないしつこさだ。これまでそいつを頼りに飯をってきた。そしてそんな能力がある限り、たとえどんな妙ちくりんな世の中になっても、俺は必ずどこかで飯をっていける。俺はあんたに追いつくよ、青豆さん。 牛河は、奇怪な容貌が禍して世間から敬遠されるも、頭の回転の速さと実務能力、口の堅さを認められて裏社会を生きてきた。緻密な調査と推理力で青豆と天吾の関係を読み解くが、そんな牛河をもってしても、彼らの心の内まで知ることは出来ない。 《天吾

    【1Q84 BOOK3】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/08/12
    「アンダーグラウンド」を通してたどり着いたと思われる1Q84の世界ですが、今まで以上に安易に解釈されることを拒否しているようにも思えます。再読したらまた違う景色を見えそうです。
  • 【1Q84 BOOK2】 - 村上春樹レヴューのブログ

    BOOK2では、青豆と天吾の生い立ちと二人の最初の出会いが明かされます。同級生だった小学校時代の思い出。そこに複雑怪奇なこの物語を紐解くカギがあります。 《天吾の物語》 「僕には一人の友だちもいない。ただの一人もです。そしてなによりも、自分自身を愛することすらできない。なぜ自分自身を愛することができないのか?それは他者を愛することができないからです。人は誰かを愛することによって、そして誰かから愛されることによって、それらの行為を通して自分自身を愛する方法を知るのです。」 天吾は、認知症緩和ケア病棟を訪れ、意思疎通のおぼつかない父親に語りかける。NHKの集金人の肩書に執着したかつての父親のように、今の自分も空白を抱えている。人を愛することができない孤独な状態は人間の核を蝕んでいく。彼はそのことを深く了解した。 《青豆の物語》 「世界のたいがいの人々は、実証可能な真実など求めてはいない。真実と

    【1Q84 BOOK2】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/08/05
    無意識に感じたこと、又は気づかなかったことを「隈取り」してくれているように思いながら拝読しました。次回が楽しみです。
  • 【1Q84 BOOK1】 - 村上春樹レヴューのブログ

    ベストセラーとなった『1Q84』を3回に分けてご紹介します。 書は《青豆の物語》と《天吾の物語》の各章が交互に進行し、互いに呼応しながら一つの物語を形作る村上作品ではおなじみの形式です。そこに恋愛・ミステリー・SF・歴史・宗教・文学などの要素、さらに80年代の社会的テーマが加わって百花繚乱の《総合小説》になっています。 《青豆の物語》 私を襲ってくるような無謀なやつらがいたら、そのときは世界の終りをまざまざと見せてやる、と彼女は決意していた。王国の到来をしっかりと直視させてやる。まっすぐ南半球に送り込んで、カンガルーやらワラビーやらと一緒に、死の灰をたっぷりとあびせかけて・・・ 青豆は、柳屋敷の老婦人の依頼で、女性に卑劣な暴力を振るう男たちの暗殺を引き受けていた。揺らぎない信念で任務を遂行する彼女の人生は、不幸な過去によって歪められていた。 《天吾の物語》 「どんな理屈を持ち出そうと、大

    【1Q84 BOOK1】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/07/29
    この作品は、自分の頭の中ではどうしても「結晶化」できないでいます。続きが楽しみです。
  • 【⑤L・デバードとアリエット 愛の物語】(『恋しくて』より) - 村上春樹レヴューのブログ

    作者のローレン・グロフは1978年ニューヨーク州生まれ。2015年に長篇作品『運命と復讐』で全米図書賞最終候補*1となり高い評価を得ました。いまアメリカで最も期待される女性作家のひとりです。 《あらすじ》 元水泳の金メダリストであり、詩人でもあるL・デバードは、ある時資産家の娘である車椅子の少女アリエットのリハビリ・トレーニングを引き受けることになる。言葉を交わし、身体が触れ合ううちに、二人は恋に堕ちる。その頃、巷はスペインから報告された謎めいた病気の話題でもちきりになっていた。 『あなたの愛人でいたいの』 「私、結婚したくないの」 彼はアリエットを見る。 「つまりね」と彼女は言う。「私はね、あなたの奥さんになるよりは、あなたの愛人でいたいの。これが何であるかを知るために、結婚指輪やら儀式やらは必要じゃない」 彼はしばらく黙っている。それからLは言う。「ああ、アリエット。君のお父さんはそい

    【⑤L・デバードとアリエット 愛の物語】(『恋しくて』より) - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/06/17
    引用した部分だけでも「ハルキ・テイスト」が伝わってきますね。それにしても、いつもながら守備範囲が広いですね(^^)
  • 【街とその不確かな壁(第三部)】 - 村上春樹レヴューのブログ

    ここまでネタバレを防ぐために、物語の山場に踏み込むことは極力避けてきましたが、逆に村上作品を味わうための基情報を紹介できているのではないかと密かに自負しています。【第三部】も引き続き作品の周辺部をご案内します。 《第三部の途中(69章)までのあらすじ》 私は高い壁に囲まれた街で、いつものように図書館に通っている。ある日、イエロー・サブマリンのヨットパーカーを着た不思議な少年を目にした。その少年はこちらをじっと見ている。何か私に話したいことがあるのだろうか。 『きみはぼくの後継者になる』 「ぼくは多くのことをあなたから学びとりました」「そしてきみはぼくの後継者になる」「はい、ぼくは〈夢読み〉としてのあなたのあとを継承することになります。どうかぼくのことは心配しないでください。前にも言ったように、古い夢を読み続けることが、ぼくに与えられた天職なのです。ぼくはここ以外の世界では、うまく生きてい

    【街とその不確かな壁(第三部)】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/05/13
    私は読むのはもう少しあとになりそうですが、結末が楽しみです。
  • 【街とその不確かな壁(第一部)】 - 村上春樹レヴューのブログ

    6年ぶりの村上春樹の新刊をご紹介します。読者の楽しみを奪わないために、私自身が最後まで読み切らないことで結末をばらしてしまう過ちを防ぎたいと考えています。言い換えれば〖読み終えていないについて堂々と語る〗というのが今回のブログの試みです(^^)/ 《第一部の途中(23章)までのあらすじ》 名前も無き16歳のきみと17歳のぼく。昨年の秋にきみと知り合い、親しく交際するようになって八ヶ月経った。きみは不思議な街の成り立ちについて語り、ぼくはそれをノートに書き留めた。その夏、二人はそんな共同作業にすっかり夢中になった。 『当のわたし』 「当のわたしが生きて暮しているのは、高い壁に囲まれたその街の中なの」ときみは言う。「じゃあ、今ぼくの前にいるきみは、当のきみじゃないんだ」、当然ながらぼくはそう尋ねる。「ええ、今ここにいるわたしは、当のわたしじゃない。その身代わりに過ぎないの。ただの移ろ

    【街とその不確かな壁(第一部)】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/05/08
    「世界の終わり~」と相似形と思っていましたが(そのようなレビューが幾つかあった)、アレンジが効いていそうですね、それでいて重なる部分もあり、次のレビューが楽しみです。
  • 【日々移動する腎臓のかたちをした石】(『東京奇譚集』より) - 村上春樹レヴューのブログ

    作は短編集『神の神の子どもは踊る』に収録された『蜂蜜パイ』の続編になっています。前回のご紹介で、主人公の淳平と作者の視点を重ね合わせて短編集全体を俯瞰してみました。今回もまた、「その後の淳平」が描かれた作から短編集の全体像に迫ってみたいと思います。 《あらすじ》 淳平は父親から「男が一生に出会う中で、当に意味を持つ女は三人しかいない」という奇妙な箴言を聞かされた。父親と疎遠になってからも、淳平は新しい女性と知り合うたびに「この女は自分にとって当の意味を持つ相手なのだろうか」と自問した。そうして31歳になった彼は、ある日、知人が開いたパーティーでキリエという名の女性に出会う。 『この世のあらゆるものは意志を持っている』 「ねえ、淳平くん、この世界のあらゆるものは意志を持っているの」と彼女は小さな声で打ち明けるように言った。淳平は眠りかけてる。返事をすることはできない。彼女の口にする言

    【日々移動する腎臓のかたちをした石】(『東京奇譚集』より) - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/04/15
    新作は、私は書評が出揃ってから読もうかと思います。こちらでの感想が楽しみです。
  • 【ロング・グッドバイ】 - 村上春樹レヴューのブログ

    書はレイモンド・チャンドラーが描く《私立探偵マーロウ・シリーズ》の代表作です。書を読み終えた時、これまで私が勝手に思い描いていたハードボイルドの概念は覆されました。 《あらすじ》 私立探偵フィリップ・マーロウは、高級クラブの前で泥酔していたテリー・レノックスを介抱した。顔の右半分に古傷を持つこの青年に不思議な友情を感じて親しい仲になる。ある日、レノックスをメキシコに送り届けたマーロウに、殺人の共犯者としての容疑がかけられた。逮捕されたマーロウはレノックスを庇って黙秘を通したために、取り調べ室で手酷い扱いを受ける羽目になる。 『それが私の稼業です』 「誰かが私のところにトラブルを持ち込んでくる。それが私の稼業です。大きなトラブルかもしれないし、小さなトラブルかもしれない。いずれにせよ警察には持ち込みにくい種類のトラブルです。警官のバッジをつけた与太者にこづき回されたくらいでへいこら口を割

    【ロング・グッドバイ】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/02/04
    こちらは若い時に読んだ時は全く心に刺さりませんでしたが、年を重ねて読むと、まるで違った味わいを受けました。村上さんの訳も、自分の作品よりも巧緻な言葉を多用しているように感じましたね。
  • 【キャッチャー・イン・ザ・ライ】 - 村上春樹レヴューのブログ

    J・D・サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』をご紹介します。大人たちの欺瞞に対して屈した想いをぶつける内容が共感を呼び、不朽の青春小説として世界中で読み継がれているのはご存じの通り。野崎孝訳の『ライ麦畑でつかまえて』以来、40年ぶりに村上春樹によって現代語訳されました。 《あらすじ》 成績不良で退学処分となったホールデンは、寄宿舎を飛び出し夜のニューヨークへ。そこで出会った女の子たちとの交遊や、ナイトクラブでの放蕩にも気持ちは晴れない。挙句の果てに売春を持ち掛けてきたエレベーター係に殴られ身も心もボロボロに。帰り着いた実家で妹のフィービーにいさめられた彼は、あまりにもイノセントなその心の内を語り始めた。 『ライ麦畑のキャッチャー』 「で、僕がそこで何をするかっていうとさ、誰かその崖から落ちそうになる子どもがいると、かたっぱしからつかまえるんだよ。つまりさ、よく前を見ないで崖の方

    【キャッチャー・イン・ザ・ライ】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2023/01/07
    今年もよろしくお願いします。独特の視点からの考察、楽しみにしています。
  • 【海辺のカフカ(下)】 - 村上春樹レヴューのブログ

    先の『海辺のカフカ(上)』では、『父を殺し、母と姉と交わる』と予言された少年の受難が描かれました。彼は機能不全家族の影響と思われる解離性障害により予言を疑似体験してしまいす。それはまるで、ポストモダン思想の文脈に掲げられた「エディプス・コンプレックス」「分裂症」「無意識の欲望」を彷彿とさせます。 書と同じ系譜の『世界の終りとハードボルド・ワンダーランド』においても、ポストモダン思想の影響を色濃く受けたモチーフが描かれていました。そこでは、その思想に背を向けるかのように、主人公が森の奥へ入っていく場面で物語は幕を閉じました。森の奥にいったい何が待っていたのか、それは謎のままにされています。 今回ご紹介する『海辺のカフカ(下)』では『入り口の石』の封印が解かれ、カフカ少年は四国の森の奥に導かれます。今再び森の奥の秘密が明かされようとしているかのように。 《あらすじ》 「入り口の石」の謎の鍵を

    【海辺のカフカ(下)】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2022/11/10
    この作品は一番と言って良いほど好みですが、説明は上手く出来ません。人が無意識に持っているものを、刺激するように感じます。
  • 【映画:ドライブ・マイ・カー】 - 村上春樹レヴューのブログ

    映画:ドライブ・マイ・カー』をご紹介します。この作品は皆さんご承知のとおりアカデミー賞の国際長編映画賞の受賞作です。原作はもともとオバマ元大統領の一押し作品ということもあって、アメリカ国内では一定の評価を得ていたようです。映像化に際して画期的なアイデアと独自の解釈を取り入れたことが、この度の受賞に繋がったのではないでしょうか。 《あらすじ》 の突然の死から二年後、家福は演劇祭の舞台演出家として招聘を受け広島を訪れる。そこで専属ドライバーにみさきを紹介され、彼女の運転で宿舎と仕事場の移動することになった。舞台のオーデションで高槻に出会った家福は、亡きとの関係を疑いつつも彼を主役に抜擢した。家福とみさきと高槻。奇妙なトライアングルの日々が始まる。 『当に他人を見たいと望むなら』 高槻「ですから結局のところ僕らがやらなくちゃならないのは、自分の心と上手に正直に折り合いをつけていくことじゃ

    【映画:ドライブ・マイ・カー】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2022/05/01
    映画は観ていないのですが、独特の切り口の書評、期待しています!
  • 【スプートニクの恋人】 - 村上春樹レヴューのブログ

    書は『ノルウェイの森』以来の恋愛モノです。小説家志望の女性が登場し、過去の作品ではお目にかかれない可愛らしい文章も登場します。また、随所に小説指南や人生訓が挿入されていて、中期村上作品のエッセンスがギュッと詰まったお得な内容になっています♡ 《あらすじ》 小学校の教師をしているぼくは、すみれに思いを寄せている。しかし彼女はミュウという17歳年上で既婚の女性に恋をしていた。そして二人で出かけたギリシャの島で、すみれは突然姿を消してしまった。ミュウからの連絡を受けたぼくはその島に向い、必死の探索を続けるがすみれを見つけることはできなかった。 『井戸のような深い場所』 すみれがどこか人里離れたところで井戸のような深い場所に落ちて、そこでひとりぼっちで救助を待ってるというイメージを、ぼくはどうしても頭から振り払うことができなかった。 すみれはミュウへの性的接触を拒まれたことをきっかけにして、煙の

    【スプートニクの恋人】 - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2022/03/23
    どうもこの作品は、人物設定が私に合わず、正面から読みませんでしたが、今回の投稿を読んで、再読したくなりました!
  • 【大統領の辞任】(『犬の人生』より) - 村上春樹レヴューのブログ

    今回ご紹介するマーク・ストランドの作品は、かつてドリフのコントでお馴染みだった《もしもシリーズ》を彷彿とさせます。題して「もしも大統領が気象マニアだったら」。いかりや長介が最後に「だめだこりゃ」と言い出しそうな突拍子もない作品です。 《あらすじ》 大統領が辞任を発表した。彼は決して人気のある指導者ではなかった。彼が在任中に行ったのは気象に関する分析と予想、国立気象博物館の建設とフロンガスとの戦いだったから。要するに彼の正体は単なる気象マニアだった。そして、前代未聞の辞任演説が始まる。 『気象の恵みは変わることなく』 私はこれまで一度として空を見上げるのをやめたことはありませんし、これから先も変わることなくそれを続けるでしょう。失望の、そして喜びの深い藍色と群青色を、それ以外のどこの場所に求めることができましょうか。気象の恵みは、変わることなく私たちの職務の域を凌駕し、私たちの口にする言葉を

    【大統領の辞任】(『犬の人生』より) - 村上春樹レヴューのブログ
    nmukkun
    nmukkun 2022/02/06
    ドリフのコントから始まった文章ですが、私は最後にアル・ゴアに行き着きました。事実は小説より奇なり、なのか、それとも事実が小説に追いついたのか。そんなお話もたくさんありますね。