陸上自衛隊の演習場で5月、敵・味方に分かれた訓練中の隊員同士が実弾を撃ち合うという「戦闘状態」が発生した。空包を撃つはずの銃から実弾が発射された背景に、何があったのか。 「想像を超えるような事故」 自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長は5月26日の記者会見でこう嘆いた。誤射は同23日午後3時半ごろ、北海道鹿追(しかおい)町の陸自然別(しかりべつ)演習場で起きた。 陸自などによると、訓練をしたのは物資輸送を主任務とする第310輸送中隊。トラックを含む車列が待ち伏せ攻撃を受け、隊員が応戦するという想定だった。敵役の隊員を含め計16人の小銃には空包が込められているはずだったが、実際には実弾が入っていた。この結果、敵役2人を含む9人が計79発の実弾を撃ち合ったという。両者の最短距離は約200メートルだったとみられる。 訓練で使われたのは、1989年度に正式に自衛隊の装備品となった89式小銃(全長