安倍晋三氏が首相に指名され、第4次安倍内閣が発足した。5年前に彼が自民党総裁に指名されたときは、憲法改正を宿願とする「右派」の首相が長期政権になると予想した人は少なかったが、来年総裁に3選されると憲政史上最長の首相となる可能性も出てきた。 私は安倍首相の外交・防衛政策は高く評価するが、彼の経済政策はほとんど成果を上げていない。アベノミクスの目玉だった量的緩和は空振りに終わり、今度は財政に軸足を移し始めた。「雇用で成果を上げた」と誇っているのに1兆円の補正予算を編成し、財界には賃上げを要請する。彼の統制経済的な政策は祖父、岸信介元首相に似てきた。 「戦時レジーム」に回帰する安倍首相 岸は戦前・戦後を通じて日本の政治を動かした「妖怪」である。戦前の商工省で計画経済を推進する革新官僚として活躍し、満州国を建設した。彼は若いころ右翼の教祖だった北一輝に心酔し、エリートが国家を指導する国家社会主義を