疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。現在はワクチンが供給されて接種が促されている段階である。 僕の父親は今どきの感覚ではそれほど高齢というわけではないが、PCを使ってワクチン接種の予約ができるとは思われなかったから、僕が代わりに申込みをした。「ワクチンの予約を取っておいたから」と言うと、父親は電話越しに僕を怒鳴りつけた。想定内である。 父親は誰かに何かしてもらうとだいたい「余計なことを」という態度でいる。正確には「してもらった」状態が顕在化されると不機嫌になる。たぶん、父親の世界では、川が流れるように自分に都合のよい状態が整えられているべきなのである。「できないだろうと思って代わりにしてあげた」という僕の態度は親に恥をかかせようとしているようなもので、言語道断なのだ。 父親は年をとって、あるいは疫病禍の影響でそういう気質になったのではない。それが通常営業と