例えば、ある評論家がある作家をこき下ろす。それだけ読むと、その作家はもう用済み、コテンパンに打ちのめされて、もう読まなくてもいい存在であるような気がしてくる。 しかし実際に、その作家の書いたものを読むと、彼には彼なりの言い分があって、彼には彼の世界があるし、彼の言っている事も正しいように思えてくる。こうして、読者は、自分が明白な意見を持ち得ない事に不安を感じてくる。 この「不安」というのが教養を持つ為には必要なものだろう。 哲学で言えば、「〇〇主義」を別の「△△主義」が覆した、というような事が言われたりする。これをそのまま受け取ると、古いものの上に新しいものが上書きされたかのような気がする。実際、そんな理解(非ー理解)を取る人も多い。 しかし、実際、古い主義の本を読むと、それはそれで、そう簡単に否定できない事が書いてある。新しい主義のものと読み比べても、確かに新展開はあっても、どちらがいい