大森先生は科学哲学なんていう狭い世界に留まるのではなく、まさに哲学をやっている人でした。先生の授業を受けて、「ああ、こうやって自分の頭で問題を考えていくってことでいいんだ!」と思いました。大森先生が自説を述べて、問題をどんどんぶつけてくるんです。答えてみろ、と言ってボンと投げてよこす。こちらがなにか答えると、執拗に反論してきて容赦なく叩きのめそうとする。 たとえば、ある授業では、質と量を区別する明確な基準など実はない、誰か言える奴がいるか、と問われました。僕がなにか答えると、それはこうこうこういう理由で区別の基準にならん、と容赦なく却下される。じゃあこういう基準はどうですかと食い下がると、それはこういう理由で、とまた却下される。授業が終わって、家に帰ってからもあれこれあれこれ考えて、次の授業でまた自分の考えをぶつけてみて、また却下される。そんな繰り返しでした。結局全部先生につぶされましたけ