最初は本当に痒かった、はずだ。 虫刺されか何かだったと思う。 刺された場所も、腫れ方も見えなかった。 自分の首は絶対に目に映らないという当たり前のことに私は初めて気付いた。 だからそれが本当に虫刺されだったのかどうか、ついぞ私にはわからないままだった。 こんなに首を意識したことがなかった。 首がこんなに触ってて魅力的な、夢中になれるものだと思ったことがなかった。 灯台下暗しとは私と私の首との出会いのために作られた言葉なんじゃなかろうか。 首って専門的な知識がなくても明らかに太い血管が通ってて、なんか非常にヤバそうなでかい筋もある。 脈打ってて、ずっと息をしてる。 そんな大事な場所なのに、こんなに触りやすい場所にあって、大丈夫なのだろうか。 露出しすぎではなかろうか、もう少し、奥まったところに隠れてなくていいのだろうか。 指で力を入れるたびに薄い皮膚が簡単に動き、自分の命まで爪をたてられる気