1996年9月、35歳の女性が、ロンドン東部のニューアム総合病院を訪れた。体はひどくやせて衰弱し、死の淵をさまよっていた。 女性の名前はウィニ・サニュー・スルーマ。 医師たちは、彼女の素性と病院にやって来た理由を質問し、検査を行った。そして、検査結果に驚いた。健康な人の場合、免疫系のCD4数は500~1600だ。しかし、サニュー・スルーマのCD4数は1しかなかった。この状況で何かの感染症になれば、命を落とすことになるだろう。医師たちはさらに質問を続けた。今までどこにいたのか、どうしてこのような状況になったのか、英国の在留資格はあるのか、といった質問だ。 サニュー・スルーマは質問に答え始めた。医師たちは病院にもう一度来るよう懇願した。入院させて、病状を監視し、新薬を投与するためだ。しかし、サニュー・スルーマは関心を示さなかった。すでに死ぬ覚悟はできていた。 それから20年。サニュー・スルーマ