「はったい粉」をご存じだろうか? オオムギやハダカムギを炒った上で挽いた粉末状の穀物である。「麦焦がし粉」・「こうせん」など様々な呼称があるが、ここでは「はったい粉」に表記を統一する。私が「はったい粉」の存在を知ったのは、「チベット旅行記」(著:河口慧海)という自伝の旅行記を読んでからである。 ……そこでまあ袋の中から麦焦しの粉を出して椀の中に取り入れそれに雪と幾分かのバタを加えてうまい具合に捏ねるです。それからまた一方の椀には唐辛子と塩とを入れて置きまして、そうして一方の麦焦しを雪とバタとでよく捏ねてその唐辛子の粉と塩とを付けて喰うのです。そのうまさ加減というものは実にどうも極楽世界の百味の飲食もこれに及ぶまいかと思うほど旨かったです。(青空文庫より引用、太字ママ) 上記は、河口慧海氏がネパールからチベット国境へ入る雪山で食事をとる場面である。チベットの主食は「はったい粉」なので、他にも