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ブックマーク / www.ele-king.net (13)

  • Cornelius | ele-king

    コーネリアスの “Audio Architecture”という曲には「Quiet!」という合図とともに静寂が訪れる瞬間がある。10秒ほどのその沈黙は自宅のステレオでかけ流していればさほど長くは感じない程度なのだが、ライヴで披露される際に目の前で音が止まった演奏をじっと眺めているとものすごく長く感じる。昨年夏のオリンピック開会式音楽担当の辞任騒動を受けてすべての活動を自粛していた小山田圭吾が、1年越しのフジ・ロック・フェスティバルのステージで復帰を果たしたことについて、その1年を早いと感じる人もいれば、長いと感じる人もいるだろう。少なくともこの日に苗場のホワイト・ステージ前に集まった人びとや、配信の開始を心待ちにしていた人びとにとっては、とてつもなく長く、厳しい1年だったはずだ。 “Mic Check”からライヴははじまった。「あ、あ、あ、マイク・チェック、マイク・チェック、聞こえますか? 

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  • Young Fathers | ele-king

    野田努 アートワークに描かれている歪められた顔は、ちょっとだけPiLの『メタルボックス(セカンド・エディション)』のジャケを思い出させる。変型した表情は、変型させられた内面を表しているに違いない。なにせこのご時世だ。しかしながら……ヤング・ファーザーにとっての肝はまずはサウンドだろう。いかに人と違った/変わった/独特なサウンドを創出して、ポップにまとめあげることができるか。 グラスゴーのエジンバラで結成されたこのグループは、その新作を聴いて思うに、つきなみな言い方をすれば、極端だがじつに“UKらしい”。広範囲にわたって、他からいろんな要素を柔軟に吸収し、そして活力を得ること。USブラック・ミュージックのエネルギーに共振しながら、模倣ではなく、その組み合わせの妙でオリジナルなものとして再編成させること。言うなれば結合術に長けていること。そしてそれが、社会の上層部からは見えない、大衆の気持ちの

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  • Various | ele-king

    Outro Tempo: Electronic And Contemporary Music From Brazil 1978-1992 80年代初頭のブラジル音楽がブライアン・イーノとリンクすることを熱望していたなんて、ちょっと面白いと思わない? まだ軍事政権下のブラジルでは、そもそもコンピュータの輸入に関して制限があった。音楽における電子機材(とくにドラムマシン)に関しては、一般的な見解としてサンバの伝統を損なうということで、それ相応の抵抗があったそうだ。独裁政権と伝統主義の両軸から、エレクトロニックな機材はうとまれていたという。このあたりの興味深い事実関係は、ジョン・ゴメスのライナーに詳しいので、ぜひ読んでいただきたい。素晴らしい研究の成果の断片が読める。すなわち、伝統的な文化に砂をかけることなく、伝統的な文化を無視することなく、しかし外(海外)に開けていく手立てはあるのか……と。つ

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  • interview with Okada Takuro | ele-king

    はっぴいえんどリヴァイヴァルでまずいなと思うのは、なんだかんだ言って結局は、なんとなく叙情的で、なんとなく口当たりのいいフォーキーなポップスを肯定するしかないというどん詰まり感だ。ああそういえば、ソフトに死んでいく──と言ったのは誰だっけ? 岡田拓郎(そして増村和彦)の内には、そうした極めて表層的なはっぴいえんどリヴァイヴァルへの違和感があり、後期森は生きているのライヴにおける超越的な一瞬は、バランスを崩しながら、なにかしら彼らが乗り越えようとしていることの情熱のひとかけらだったとぼくは思っている。 どう来るのかとずっと楽しみにしていたところ、しかしながら彼のソロ・アルバム『ノスタルジア』は、自らの内に燃えるそうしたもの、ある種の熱狂を抑制し、メロウで口当たりのいいポップスとしての体裁を保っている、表向きには……。彼のことだから、考えに考えに考え抜いた結果、いまはこれなのだろう。まあ、コー

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  • Fleet Foxes | ele-king

    耳を澄ませば、海が囁く声が聞こえる。目を凝らせば、温かな木漏れ日が見える。 フリート・フォクシーズの6年ぶり、3枚めのアルバムには、気をつけていなければ聴き逃してしまいそうな小さな音がたくさん録音されている。まずもってその幕開けに用意されたのが「静けさ」だ。ポロンと小さく弾かれるアコギの弦と、呟くように抑制された男の歌声。それは1分を過ぎた辺りでバッと視界が開けるように多人数・多楽器によるアンサンブルとなるが、よく聴けば、鳥のさえずりが後ろで響いている。雄大なストリングスの旋律と、聴いていると背筋が正されるような毅然とした歌声。そしてそれは、やがて波の音を導いてくる……。ダイナミックな風景の移り変わりの後景には、たくさんの生き物や自然の気配がざわめいている。密室的なところがまったくない。これは旅の音楽だ。見たこともない場所へと、自分の足で踏みこんでいこうとするフォーク・ミュージック……。

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  • interview with Shonen Yoshida | ele-king

    「省念さんにとって桃源郷とはなんですか」と書きかけてやめた。メールインタヴューでそんなことを訊くのは照れくさいし、理想にせよ状況にせよ、抽象化をともなう問いは対話において感傷的な回答を結果しやすく、ヤボなテレビのドキュメンタリー番組みたいになっちゃいそうじゃないですか。ある作品に通底するものはそれを耳にする私たちの目の前にあり、吉田省念の音楽はそれを隠そうともしない。おおらかなものがゆったりながれていく。フォークやブルース、ロックさえすでにルーツのいちぶである世代の、先達の音楽をたっぷりとりこみ血となり肉となったものを気負うことなく提示する音楽。クラウス・ディンガーと協働した経験のあるエンジニア尾之内和之とつくりあげたサウンドは前作『黄金の館』よりもナマの響きをいかし、伊藤大地、谷健人、千葉広樹、四家卯大、Yatchiら、おなじみのメンバーとの演奏は視線をかわしあう趣がある。色彩はおちつい

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  • interview with Penguin Cafe | ele-king

    音楽歴史において、「ブライアン・イーノ以前/以降」という区分は大きな意味を持っている。「アンビエント」の発明はもちろんのこと、それ以前に試みられていた〈Obscure〉の運営も重要で、そこから放たれた10枚のアルバムによって、新たな音楽のあり方を思索する下地が用意されたと言っても過言ではない。ペンギン・カフェ・オーケストラを率いるサイモン・ジェフスもその〈Obscure〉から巣立ったアーティストのひとりである。同楽団は「イーノ以降」のクラシック音楽~ミニマル・アンサンブル~アヴァン・ポップのある種の理想像を作り上げ、じつに多くの支持を集めることとなったが、残念なことにサイモンは脳腫瘍が原因で1997年に亡くなってしまう。 それから12年のときを経て、サイモンの息子であるアーサーがペンギン・カフェを「復活」させた。メンバーも一新され(現在はゴリラズのドラマーや元スウェードのキイボーディスト

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  • Mount Kimbie | ele-king

  • 第1回:アメーバの記憶をとりもどせ | ele-king

  • Adam Rudolph's Moving Pictures | ele-king

  • Laurel Halo | ele-king

    ファースト・アルバム『クアランティン』(2012年)は、モダン・アート作家の会田誠による『切腹女子高生』を用いたジャケットで、またボーカロイドの初音ミクを用いたプロジェクトにも参加するなど、日文化にも何かと縁があるローレル・ヘイロー(インタビューでも細野晴臣や佐藤博から、池田亮司などの話題や影響が語られるなど、かなり日音楽にも詳しいようだ)。『クアランティン』はサウンドの面白さもさることながら、彼女の独特の歌が異彩を放っていた。うまいとかヘタという次元を超えた彼女の歌は、通常のポピュラー・ソングの形式とも切り離されたところがあり(そもそも彼女はクラシック音楽をやっていて、そうしたトレーニングの中から独特の唱法を身につけたところもあるようだ)、それがテクノともIDMともつかない形容不能なサウンドと結び付き、ほかに見当たらない独特の個性を生み出していた。 しかし、それ以降のセカンド・アル

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  • Satomimagae | ele-king

    音色とは音符では表されない音楽の重要な属性で、クラシックからすればシンプル極まりない音楽であろうロックやフォークだが、歌っているのがその人でなければ成り立たない曲ばかりであって、いや、リズムやメロディが凡庸でも、声の魅力だけで成り立ってしまう曲はまったく珍しくない。 サトミマガエは当にクールな音色=声の持ち主だ。畠山地平の〈White Paddy Mountain〉からの2枚目になる『Kemri』を聴いてあらためてそう思った。なんといっても1曲目の“Bulse”が素晴らしい。絞り出される低い声は、荒削りだが魅力充分で、そしてブルース調の展開による音の隙間には、彼女のあらたな可能性を感じる。“Odori”や“Leak”や“Mebuki”のような曲では、アコースティック・ギターの霊妙な響きとともに、彼女の歌は前作同様にもうひとつの世界を創出する。このCDが再生されているあいだ、見慣れた日常の

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  • interview with Laurel Halo | ele-king

    Home > Interviews > interview with Laurel Halo - ポップであること、それは実験的であること 一度やったことはもうやらない。そういうアーティストだと思い込んでいた。だから、初めてローレル・ヘイローの新作『Dust』を聴いたときは驚いた。まさか、ふたたびヴォーカル・アルバムを送り出してくるなんて、と。 彼女は昨年、このアルバムを制作する傍らスティル・ビー・ヒアというプロジェクトに参加している。それは初音ミクにインスパイアされたアート・プロジェクトで、松任谷万璃が始動させたものだ。そのサウンド部門を担っているのがローレル・ヘイローなのだけれど、彼女がふたたびヴォーカル・アルバムを作ろうと思った背景のひとつに、その初音ミクの存在があったんじゃないだろうか。ボーカロイドの歌/声と人間の歌/声、その両者のあいだに横たわっている差異に触発されたからこそ、彼

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