昔、教科書にヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」という物語があった。ひどく衝撃的な物語であったことをよく憶えている。 主人公の「ぼく」は蝶・蛾集めに夢中になっていた普通の少年だ。 一方で、隣に住んでいる「エーミール」は、品行方正な模範的少年であり、また蝶の収集についても高い技術を持っていた。 ある日、彼に「ぼく」が捕まえた珍しい蝶のコレクションを見せたところ、「扱いが酷い」とひどく批判されたことから、「ぼく」はもう二度と「エーミール」に蝶を見せないと決めたが、その劣等感は消えることがなかった。 暫く後、エーミールがとても珍しい蛾をさなぎからかえした、といううわさを聞き、「ぼく」はエーミールの家を訪ねたが留守だった。彼の部屋に入ると美しい標本が並んでおり、迷った挙句「ぼく」は思わず盗みを犯してしまった。 良心の呵責に負け、思い直してそれを返しに行くのだが、すでに標本は壊れており彼に謝り、自