自分の要求を相手に押し付けるためには、自分が相手より能力で優れているだけでなく、その能力を戦略的に活用する方法を知らなければなりません。この視点は、あらゆる種類の軍事力の運用で必要ですが、核戦力を運用する場合には特に重要な意味を持っています。核戦力で敵に優越していたとしても、核戦争で勝利を追求することは共倒れになる危険があるためです。 そのため、戦略の研究では、かなり早い時期から核戦力と通常戦力を切り離して運用することを念頭に置いた核戦略の理論が発展してきました。その先駆者の一人がトーマス・シェリングであり、彼の古典的著作『軍備と影響力(Arms and Influence)』(1966)は核保有国が他国を従わせるためには、どれだけ自分の脅しに信憑性を持たせることができるかが重要だと論じました。 シェリング著、斎藤剛訳『軍備と影響力:核兵器と駆け引きの論理』勁草書房、2018年 シェリング
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