(講談社現代新書・756円) 才気とユーモアにあふれる筆致で読者を自発的な外国語学習へとやわらかく誘う「フリーランス語学教師」の最新作である。一言語につき見開き二頁(ページ)の短章を、あいうえお順に重ねること九〇回。理論の構築より、個別の言語を学ぶ喜びに浸ることの大切さを、著者は身を以(もっ)て示す。既知の外国語で書かれた未知の言語の文法書を買い、教材CDを音楽のように流し、いまだ読めない本をも嬉々(きき)として買い求める。 広い視野から言語を眺めれば、人は「言語に対して謙虚になれる」。当然、母語を異にする他者に対しても謙虚になって、わずかな差異に潜む大きな差異に、また、差異があるからこその相互理解のあり方に気づかされるだろう。本書を読んで、私はコサ語の教材を注文した。(敏)