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ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (8)

  • トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』 - 西東京日記 IN はてな

    書を「『21世紀の資』がベストセラーになったピケティが、現代の格差の問題とそれに対する処方箋を示した」という形で理解している人もいるかもしれません。 それは決して間違いではないのですが、書は、そのために人類社会で普遍的に見られる聖職者、貴族、平民の「三層社会」から説き始め、ヨーロッパだけではなく中国やインド、そしてイランやブラジルの歴史もとり上げるという壮大さで、参考文献とかも入れると1000ページを超えるボリュームになっています。 ここまでくるとなかなか通読することは難しいわけですが(自分も通勤時に持ち運べないので自宅のみで読んで3ヶ月近くかかった)、それでも読み通す価値のある1冊です。 書で打ち出された有名な概念に「バラモン左翼」という、左派政党を支持し、そこに影響を与えている高学歴者を指し示すものがあるのですが、なぜそれが「バラモン」なのか? そして、書のタイトルに「イデ

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    notio 2023/12/27
  • 岸政彦/梶谷懐編著『所有とは何か』 - 西東京日記 IN はてな

    私たちはさまざまなものを「所有」し、その権利は人権の一部(財産権)として保護されています。「所有」は資主義のキーになる概念でもあります。 同時に、サブスクやシェア・エコノミーの流行などに見られるように、従来の「所有」では捉えきれない現象も生まれています。 書は、この「所有」の問題について研究者が集まって書いたなのですが、まずは冒頭の岸政彦とつづく小川さやかの論文で、私たちが生活していく上でかなり強い足場として認識している「所有」が、そうした足場になっていない社会の様子が紹介され、その後に経済学歴史学や社会学の立場から「所有」が論じられています。 「所有」だけではなく、「制度」や「秩序」といったものについても考えが広がる、面白い内容になっています。 目次は以下の通り。 第1章 所有と規範―戦後沖縄の社会変動と所有権の再編(岸政彦) 第2章 手放すことで自己を打ち立てる―タンザニアのイ

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    notio 2023/08/05
  • 東島雅昌『民主主義を装う権威主義』 - 西東京日記 IN はてな

    「民主主義」の反対となる政治体制というと「独裁」が思い浮かびますが、近年の世界では金正恩の北朝鮮のようなわかりやすい「独裁」は少なくなっています。 多くの国で選挙が行われており、一応、政権交代の可能性があるかのように思えますが、実際は政権交代の可能性はほぼ潰されているような体制の国がけっこうあります。 独裁からこういった選挙があるけど政権交代の可能性がほぼない国までひっくるめて政治学では「権威主義」、「権威主義体制」と言い、近年では今井真士『権威主義体制と政治制度』、エリカ・フランツ『権威主義』のように権威主義を分析したや、川中豪『競争と秩序』のように民主主義と権威主義の狭間で動くような国(東南アジアの国々)を分析したも出ています。 こうした中で書は権威主義体制の戦略、特に権威主義体制における選挙の利用について分析したになります。 権威主義体制に選挙は必要ないような気もしますが、先

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    notio 2023/06/04
  • 平野克己『人口革命 アフリカ化する人類』 - 西東京日記 IN はてな

    去年の夏に出たときに読もうと思いつつも読み逃していたのですが、これは読み逃したままにしないでおいて正解でした。 著者が2013年に出した『経済大陸アフリカ』(中公新書)は、アフリカの現実から既存の開発理論に再考を迫るめっぽう面白いでしたが、今作も人口について基的な理論を抑えつつ、それに当てはまらないアフリカの動きを分析していくことで、未来の世界が垣間見えるような面白いです。 目次は以下の通り。 第1章 人口革命と人口転換 第2章 グローバル人口転換 第3章 アフリカの人口動向 第4章 人口と糧 第5章 人口と経済 18世紀後半からイギリスで1%を上回る人口増加が持続的につづいたことが人口革命の始まりと言われています。その結果、イギリスの人口は1801年の約1600万人から1920年には約4682万人まで3倍近くになりました。 これがアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド

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    notio 2023/03/05
  • ブランコ・ミラノヴィッチ『資本主義だけ残った』 - 西東京日記 IN はてな

    世界の不平等について論じた『不平等について』や、「エレファント・カーブ」を示して先進国の中間層の没落を示した『大不平等』などの著作で知られる経済学者による資主義論。 現在の世界を「リベラル能力資主義」(アメリカ)と「政治的資主義」(中国)の2つの資主義の争いと見た上で、その問題点と今後について論じ、さらに「資主義だけ残った」世界の今後について考察しています。 著者のミラノヴィッチはユーゴスラビア出身なのですが(ベオグラード大学の卒業で、アメリカ国籍を取得)、そのせいもあって社会主義とそこから発展した中国政治的資主義の分析は冴えており、「社会主義が資主義を準備した」という、挑戦的なテーゼを掲げています。 アセモグル&ロビンソンは『国家はなぜ衰退するのか』や『自由の命運』の中で、中国の発展はあくまでも一時的なものであり、民主化や法の支配の確立がなされないかぎり行き詰まると見てい

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    notio 2021/07/31
  • スーパークレイジー君の当選によせて - 西東京日記 IN はてな

    2021年1月31日の埼玉県戸田市の市議会議員選挙(定数26)において、2020年の都知事選でもそのパフォーマンスが話題なったスーパークレイジー君こと西誠氏が25番目の912票の得票で初当選しました(政治家としてもスーパークレイジー君として活動するとのことなので、以下もスーパークレイジー君で)。 都知事選では「百合子か、俺か」のキャッチフレーズやそのパフォーマンスからイロモノ候補かと思っていたのですが、政見放送を見たら非常に真面目な主張をしていて驚いた記憶があります。 今回の当選を受けて、マスコミでも話題を集めていますが、今回のスーパークレイジー君の当選には「驚いた」「ウケる」といった要素だけではなく、日の選挙や民主主義を考える上での重要な問題が含まれていると考えるので、以下、2つの面から考えてみたいと思います。 1. 日の地方議会の選挙制度の問題 今回の戸田市議会議員選挙の結果は以

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    notio 2021/02/05
  • 小熊英二、樋口直人編『日本は「右傾化」したのか』 - 西東京日記 IN はてな

    ここ最近話題になっている「右傾化」の問題。「誰が右傾化しているのか?」「当に右傾化しているのか?」など、さまざまな疑問も浮かびますが、書はそういった疑問にさまざまな角度からアプローチしています。 実は、国民意識に関しては特に「右傾化」という現象は見られないが、自民党は以前より「右傾化」しているというのが、書の1つの指摘でもあるのですが、そのためか、執筆者に菅原琢、中北浩爾、砂原庸介といった政治学者を多く迎えているのが書の特徴で、編者は2人とも社会学者であるものの、社会学からの視点にとどまらない立体的な内容になっていると思います。 目次は以下の通り。 総 説 「右傾化」ではなく「左が欠けた分極化」  小熊英二 第I部 意 識 1 世論 世論は「右傾化」したのか  松谷満 2 歴史的変遷 「保守化」の昭和史――政治状況の責任を負わされる有権者  菅原琢 第Ⅱ部 メディア・組織・思想 1

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    notio 2020/12/06
  • 遠藤晶久/ウィリー・ジョウ『イデオロギーと日本政治』 - 西東京日記 IN はてな

    まず、こののインパクトは帯にも書かれている、「維新は「革新」、共産は「保守」」という部分だと思います。 若年層に政党を「保守」、「革新」の軸で分類されると、日維新の会を最も「革新」と位置づけるというのです。そして、以下のグラフ(134p図5.1)から読み取れるように、20代が無知だからというのではなく、20〜40代に見られる現象なのです。 書は、さまざまなサーベイなどを通じて現在の日の有権者の政治意識を明らかにしようとしたです。ソ連の崩壊や社会党の退潮、小選挙区比例代表並立制の導入と新進党、民主党といった野党の誕生の中でも、政治を語る言葉はそれほど変化しませんでしたが、冒頭にもあげた「保守/革新」の変容などをサーベイによって示すことで、若い世代に起きている政治認識の変化を浮き彫りにしています。 さらに都知事選に出馬した田母神俊雄の支持層から分析した日の極右層の姿や、若者の「自民

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    notio 2019/07/16
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