読者の賢い騙し方-基礎編 古代史の珍説奇説が世に受け入れられる下地というものは、「定説」を斬って捨てる爽快感とでも申しますか、「権威」の虚飾を暴き、世に憚る巨悪をなぎ倒すといった、そういう快感を我々自身が心の底で求めていることにあります。 歴史学のどこに巨悪が潜んでいるかというと、そんなものは居ないのでありまして、単なる代償行為であります。 しかし宝が必ず出るから発掘費用を出せといわれたら騙されなくとも、象牙の塔内にふんぞり返っている頑迷固陋な権威者を完膚なきまでに論破するといえば文庫本程度の出費なら笑って騙されてくれます。 騙されたがっている人間を騙すほど簡単なことはありません。賢い「珍説」家は、読者の、こういった希求を敏感に汲み取り、彼らの著作にツボを押さえた名場面を用意します。 中にはわかり易く『真の歴史を葬り去ろうとする権力者の影』などにも言及して盛り上げてくれる方もありますが、こ