作者や作品の内容について、まったく予備知識なしに読みだすことは稀である。ところが、今回はそうだった。年末の慌ただしい時期に届いたゲラの束。しかも作品の名前が本誌と同じ『波』だったのでタイトルすらもスルーしていた。 いざ読みはじめると、ページをめくるごとに心臓がドキドキしてきた。いったいこれはどういう作品なのか。フィクションなのか、ノンフィクションなのか。文学的な香りが高く小説のようでもある。心の準備なしには先に行けない気がして、禁(といっても自分が設けたものだが)を犯して後の訳者あとがきを読んだ。ノンフィクションとわかり、深呼吸して元のページにもどった。 2004年クリスマスの翌日、スマトラ島沖で巨大地震が起き、それによる津波がスリランカの海辺に大災害をもたらした。観光客で賑わっていた時期で、ニュースでも悲劇が取り沙汰されたのでご記憶の方もいるだろう。本書はその高波に呑み込まれながらも、辛
![ソナーリ・デラニヤガラ、佐藤澄子/訳 『波』 | 新潮社](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/48533dc61a2b13cee8e105d1dc41eaff37817f6a/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.shinchosha.co.jp%2Fimages_v2%2Fbook%2Fcover%2F590156%2F590156_xl.jpg)