「悲しい時、腹が減っていると、余計に悲しくなる。辛くなる。そんな時はメシを食え。もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。 そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。それでまた腹が減ったら、一食食べて、その一食分生きるんだ。 そうやってなんとかでもしのいで命をつないでいくんだよ」 田中さんのお母さんが、静かな暗い色の目でこっちを見ている。 さよなら、田中さん/鈴木るりか 作/小学館 作者の鈴木るりかさんは、小学四年、五年、六年生の時に、小学館主催の『12歳の文学賞』を3年連続で受賞し、この作品を書いたのは中学2年在学中でした。 今は21歳位でしょうか、はちきれるような笑顔の少女です。 主人公は小学6年生の田中花実は母子家庭で貧しい生活だけれど、工事現場で力仕事をしている大食いのお母さんと底抜けに明るい日々を送っています。 お父さんは生まれた時からいない。しかも、お母
