森と川をつなぐ細い糸:寄生者による宿主操作が生態系間相互作用を駆動する 神戸大学 大学院理学研究科 准教授 佐藤 拓哉 寄生者はよく、その複雑な生活史を全うするために宿主の行動を操作します。これは、Richard Dawkinsによって提唱された「Extended Phenotype (延長された表現型)」の代表的な例として、多くの生物学者を魅了してきました。近年、生物学の急速な発展に伴い、行動操作の進化的背景や神経生理学的な機構が解き明かされつつあります。一方、この行動操作という現象が生態系の中でどのような役割を持つかは、これまで明らかにされていませんでした。 寄生虫であるハリガネムシ(類線形虫類)(図1)は、宿主であるカマドウマ・キリギリス類の行動を操作して河川に飛び込ませることで、宿主から脱出し、水中を泳いで繁殖相手を探します。私たちは、この行動操作が河川性サケ科魚類に大きな餌資源(