アキレス腱を射られて死ぬ英雄アキレス(アキレウス) 〝卒業〟後も先輩を意識? 前回の変ロ長調のピアノソナタ 第11番で、初期創作の総決算を行ったベートーヴェン。 これ以降は〝実験期〟と言われる時期で、これまでの枠組みにとらわれず、新しい道を探っていきます。 ここからは1曲、1曲が独創的で、ベートーヴェンならではの強烈な個性が香り立つ世界が繰り広げられていきます。 と言いながら、次のピアノソナタ 第12番は、またモーツァルトを意識した作品なのです。 ベートーヴェンが元ネタにしたのは、有名な「トルコ行進曲」のついた、ピアノソナタ 第11番 イ長調 K.331。 ソナタなのに、ソナタ楽章がひとつもない、モーツァルトの中でも異色の作品です。 ベートーヴェンは、この矛盾したコンセプトを自分の作品でもやってみよう、と思いついたのです。 つまり、モーツァルトの〝実験〟を自分なりに、という発想なのです。