CDショップでは、ケースのデザインで選ぶ「ジャケット買い」は珍しくない。書店でも、ユニークな装丁や仕掛けをほどこした本が、読者の目にとまるのを待っている。(金巻有美) 実は凝ってます 大きな顔が描かれた表紙が目を引く石田千の連作短編集『部屋にて』(角川書店)は、カバーの左上が折られ、中表紙に印刷されたタイトルがのぞく。初版5000部を1冊1冊手作業で折り込んだといい、身近なものを通じて心の奥をのぞきこむような内容を連想させる魅力的な装丁だ。 永江朗著『暮らしの雑記帖』(ポプラ社)は、封筒に入って郵送されてきた明細票のようなデザインが面白い。透明なビニールに覆われた宛名(あてな)欄から著者名が見え、暮らしをつづったエッセー集にぴったりだ。 ひっくり返してみたら裏も表紙になっているのは、折原一のミステリー『黒い森』(祥伝社)。二つの物語が表裏両方から読めるようになっており、真ん中の袋とじを開け