スプラッターやグロテスクではない「怖さ」 「怖い絵」展をやりませんか、と産経新聞の藤本聡さんから提案されたのは7年ほど前。兵庫県立美術館で講演をした後の雑談中だったので、いいですね、と答えはしたものの、あまりリアリティはなかった。 それから2年後、つまり今から5年前、再び藤本さんから今度は本気のお話しがあった。兵庫県美の学芸員、岡本弘毅さんも加わり、ここに――後にして思えば――3人の戦友によるちっちゃな師団が結成されたのだ。 最初は闇雲という感じだった。コネクションのつけられそうな美術館のリストを見せられ、わたしが次々欲しい作品にチェックしてゆく。後で藤本さんが言うには、よくもまあ貸してくれそうもない作品ばかり選ぶものだなあと思った由。 そうこうするうち、拙著でも扱ったドレイパーの「オデュッセウスとセイレーン」、ビアズリー「サロメ」、ホガース「ビール街とジン横丁」、ゴヤ「戦争の惨禍」が借り