筆者は、昨今のいくつかの「資本主義批判」が気になっている。現状を資本主義だとして、このままの形で守りたいわけではないのだが、議論が急所から外れている点の居心地が悪いのだ。 気鋭の若手論者の書籍を2冊読んだ。白井聡『武器としての資本論』(東洋経済新報社)と斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)だ。両著はテイストが大きく異なるが「考えながら再読して楽しい」類いの良書で共にお勧めできる。 白井氏は「永続敗戦論」で示した、日本が所詮アメリカの子会社のような存在でしかない現実を的確に指摘していた点で小気味よい議論を展開した方だ。 直近を振り返ると「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げていた安倍前政権が、徹底的な対米追従を指向していて実は最も「戦後レジーム的」だったのは皮肉だった。「親会社」の社長的存在であるトランプ大統領に対して徹底的に機嫌を取る努力をした安倍前首相は、子会社の社員たる日本国