「神隠し」とは何か?その事例をあげ、分類し、それらを民間信仰とつなげつつも具体的な意味づけを試みている。薄いながらも大きな視点を持った本である。 まずはいくつかの事例が挙げられ、それらから神隠しを4つのタイプに分類している。 ・失踪者が無事に戻ってきて、体験談を話す(A1) ・失踪者が無事に戻ってくるが、記憶がない(A2) ・失踪者が帰ってこず、事件自体はフェードアウトする(B) ・失踪者が死体となって発見される(C) 以上の4タイプである。 それを踏まえた上で、民間伝承や神話的世界をからめながら分析してゆく。 個人的に興味を惹かれたのは終盤にでてくる「神隠し」の社会的意義だ。もしかしたら本人の気まぐれからなる単なる失踪を、天狗の仕業などということにより、再び帰ってきたとき、すべてを免責して受け入れるという機能が「神隠し」にはあった。 連れ去られるべき異界を失った現代人は「神隠し」ではなく